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飼い犬の命が人命並みに扱われる時代をどう思うか





「エア・カナダ機、犬を救うため緊急着陸 貨物室に不具合」:CNN.co.jp 9月17日(木)


引用開始…(CNN) イスラエルからカナダに向かっていたエア・カナダの旅客機が、貨物室に預けられていた犬を救うために行き先を変更して、ドイツに緊急着陸する出来事があった。

エア・カナダ85便はイスラエルのテルアビブからカナダのトロントに向かう途中、貨物室の暖房装置に問題が発生。貨物室には、乗客のジャーマン・コントロビッチさんが預けた7歳のオスのフレンチブルドッグ犬「シンバ」がいた。

エア・カナダの広報によると、暖房装置の問題を知った機長は犬の安全を気遣い、「この高度では極めて不快度が高く、そのまま飛行を続ければ生命が脅かされる恐れもある」と判断したという。

機長の判断で同機は行き先を変更してドイツ・フランクフルトの空港に着陸。シンバは別の便に乗り換え、85便には約75分の遅れが出た。

広報は、「乗客にはご迷惑をおかけした」としながらも、「犬が危険にさらされる恐れがあり、行き先の変更によって安全が確保されたと知ると、おおむね好意的な反応だった」と話している。

飼い主のコントロビッチさんはトロントの空港で地元メディアの取材に応えて「この犬は自分の子どもみたいなもの」と語り、機長に感謝の意を表した。別の乗客も「間違いなく正しい判断だった」とコメントしている。

航空専門家は、ドイツを経由したことで燃料費はかさんだはずだとしながらも、「機長には機内の全生命を守る責任がある」と指摘した…(引用終わり)。



へそ曲がり月姫の意見。

正直、上の記事を読んだ時の最初の感想は、「ここまでやりますか!?」でした。

>「機長には機内の全生命を守る責任がある」

カッコいいね。本当にこのような発言をしたのかしら? 一応、本当だとしておこう。

で、私は、機長に尋ねたくなる。

もしも、犬ではなく、ヘビだったら?トカゲは?

ヘビやトカゲの命を守る為にも、緊急着陸しますか?

機長は「むろん、そうだ。犬とトカゲの命に差別は無い」と答えるのでしょうか?

一般の人達は、「犬や猫なら分かるが、いくらなんでもヘビやトカゲまではやり過ぎ」くらいの感覚ではありませんか?しかし、カナダ機長は、「機内の全生命を守る責任」と断言しているのです。

で、私は、機長の判断を称賛している人に尋ねたくなる。

飛行機の遅れで、会社の命運を左右する大型契約がフイになった経営者が出ても、親の死に目に間に合わなくなった人がいたとしても、それでも、犬の命を守った機長を称賛しますか?たとえ、ヘビやトカゲであっても?

「さすがはカナダ。動物愛護。これぞ、先進国の証し」と称賛しますか?

これと関連して思い出すのは、鬼怒川の決壊で被災した人達の中に、手元に抱えた飼い犬と一緒にヘリコプターで救助された例があったことです。もちろん、飼い主にとっては飼い犬は家族と同じだから、犬が助けられた方が良いに決まっています。

しかし、これが手元に抱えられない大型犬だったら?

救助隊の人は、大型犬を家の中から探し出し、救助するのでしょうか?他に救助を待っている被災者がいても?家は激しい濁流で押し流される寸前という、待った無しの状況の中です。もしも、救助隊員が飼い主に、「犬は諦めなさい」と言ったら、世間からのバッシングを受けることになるのでしょうか?

そして、これが大型犬ではなく、ヘビだったら?

私はこう思います。

カナダ機の例にせよ、鬼怒川決壊の例にせよ、救われたのが「飼い犬」ということがポイントなのではないかと。

つまり、イルカの例ではないが、知能が高く人間に懐く犬だからこそ、人は無条件で「犬の命を助けるのは当然」と思うのではないかと。もしも、これが知能が低く、見た目にもグロテスクなヘビやトカゲだったら、人は違った反応を示すのではないかと。あるいは、哺乳類優先の価値観でしょうか?爬虫類や両生類は哺乳類よりも、「下等な動物」だから、命の価値も落ちるのでしょうか?

一匹の飼い犬の命を救うことは、大型契約をフイにする経営者や、親の死に目に会えない子供の「被害」とトレードオフになるのでしょうか?「何て私は不運なんだ!しかし、犬の命を助ける為なら仕方ない」と容認するのでしょうか?もしも、ヘビやトカゲの命を助ける為だったらどうなのでしょうか?容認でしょうか?むしろ、「ふざけんじゃねぇぞ!」となるのではないでしょうか?

「残酷とは何か」の記事で少し触れたことがあるように、同じ動物でも、人間の好みや趣味、価値観で命の序列が生まれている現実を思わざるを得ません。動物側にしてみれば、「ケッ!人間は勝手なもんだ!」と、憤りたくもなろう。

もっとも、その人間にしても人を、民族や人種、生まれや育ち、学歴や外見、身分や財産で差別しますからね。

もちろん、犬の命が人並みに扱われる傾向がどの国でも社会的に定着しているのであれば、カナダ機長の判断は肯定される。私もそれを否定するつもりはない。が、緊急事態にあっても、人に重大な被害や損失を与える可能性があっても、犬の命が人間の命と同じく扱われることを手放しで称賛する現代の風潮に、私は少々違和感を覚えます。何か、少し、おかしな方向に進行しているのではあるまいかと。もちろん、犬も助かる方が良いに決まっていますが。

飼い犬はしばしば人を襲って危害を加える場合があります。犬の命が人並みに扱われるのであれば、人を襲った飼い犬は人並みに処分を受け、危害の大きさによっては、人並みに、牢獄に入れるか、死刑にすべきでしょう。飼い主だけが罰を受けるのでは、片手落ちです。もちろん、これはバカげた暴論です。しかし、何故か、ちょっと反発したくなります。

そもそも、旅客機にペットを乗せること自体が問題かもしれません。ペットを乗せる限り、また同じ事態が起こり得るわけです。

また、貨物室に「閉じ込められる」飼い犬も可愛そうじゃないかしら?
かなりのストレスがあるのではないでしょうか。昔、旧ソ連でロケットの打ち上げと飛行実験で犬や猿をの乗せた例があり、無事地上に戻って来た犬や猿の中にはストレスで胃潰瘍になった例があったと、何かの本で読んだ記憶があります。家族のマイカー旅行に同乗した飼い犬が車に酔ってゲボゲボやる例もあるという。気の毒な話です。

飼い主のコントロビッチさんは、「機長に感謝しています」と言ったそうですが、そんな単純な心理状態だったでしょうか?迷惑や損害を与えたかもしれない他の乗客への、「負い目」を強く感じていたのではないでしょうか。

他の乗客が、「機長の判断は正しかった」と答えた背景には、飼い主への、「配慮」もあったように推測します。「機長の判断は間違いだ!こっちは迷惑した」なんて言ったら、コントロビッチさんは居たたまれないでしょう。何も、彼が「私の犬を助けてくれ!」と、機長に強く要求したワケではなかったようですしね。

結論としましては、カナダ機のような事例は、「これもご時世だ」、ということなんでしょうね。

真面目な話、犬どころか、ヘビでもトカゲでも、「人並みに命は守る」がまかり通る時代が来るのでしょうね。

ペットのトカゲの命を守る為に、他人や企業が損害を被っても、誰も文句を言えない時代が。

きっと、私はペットを飼わない人間なので、こんな感想を抱くのでしょう。

ペットを飼っている人間は私とは違った感想を持つかもしれませんね。



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2015.09.22 | | コメント(11) | トラックバック(0) | 政治・社会



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プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、神仏を尊び、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者熟女(四十路半ばを過ぎた)ですが、よろしくお願いします。

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