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フィギュアスケート:演技構成点(PCS)に関する「巷説」は崩壊したか




●2015グランプリシリーズアメリカ大会でロシアのメドベデワ選手が、演技構成点(PCS)で非常に高い評価を受けました。ここから私が演技構成点の問題について考えたことを述べます。


①「演技構成点(PCS)は、実績を積まないとアップしない」という「巷説」は誤り。

今回のメドベデワ選手が実証しましたね。ジュニアからシニアにあがって初のグランプリシリーズでは、フリーの演技構成点はいきなり67.16点でした。すなわち、各5項目が8点台初め~半ばという高評価でした。ジュニアあがりの女子選手が過去にこんなに高い評価を受けた例はありません。浅田選手や鈴木明子さんの演技構成点とほとんど変わらぬ評価です。驚きです。

もちろん、選手によってはシニアでの参戦回数を積むことで一歩一歩階段を上がるように演技構成点がアップして行く例の方が多いでしょう。鈴木明子さんがその典型です。また、キム・ヨナさんやパトリック・チャン選手のようにシニア参戦からしばらくしてポーンと評価がアップする例もあります。しかし、メドベデワ選手の例は、年齢や実績に関係無く、「素晴らしい演技には思い切って高い評価を!」がジャッジの間で定着していることを示したと思います。


②「演技構成点(PCS)は、地元の選手にはやや甘くなる。地元の利がある」という「巷説」は誤り。

地元アメリカのゴールド選手のフリーの演技構成点は68.93点で、メドベデワ選手とほとんど同じ評価でした。もしも、「地元の利」が作用するのであれば、二人の選手の評価にもっと明確な差をつけても良かったハズです。そうすればゴールド選手が優勝したことでしょう。が、そうはならなかった。ましてや、相手はライバル国のロシアの選手です。

①も②も、「絶対にそう言い切れるのか?」との反論もありましょう。しかし、「演技構成点の評価は実績主義では無い。地元選手に甘めということは無い」を証明するのは、悪魔の証明になりますから不可能です。しかしながら、「有る」という証明も無いのですから、ここは「ジャッジはあくまで今行われた選手の演技を純粋に評価しているだけで、年齢や実績や国籍を考慮に入れる頭も無ければ、そのような余裕も無いであろう」と見て置くくらいで良いのではないでしょうか。

ただ、「それにしてもメドベデワ選手の評価は高過ぎやしないか?」という素朴な疑問はあるでしょう。私もちょっとそのようには感じました。が、あくまで印象に過ぎず、具体的に論理的に説明は出来ないことです。

素人であっても、シニアのトップスケーターの演技と、下位のスケーターやジュニアのスケーターの演技をたくさん見ていると、大枠では演技構成点の差異はある程度分かると思います。各エレメンツの出来栄え、スピード感、スケートの滑らかさ、音楽表現の巧みさ等、ある程度はレベルの違いを私達も掴み得ます。

が、例えば、上位10人のトップスケーターのレベル差などほとんど無いのですから、こういう段階になりますと、私達には分からないですね。テレビで解説をしている元スケーターだってどこまで分かるのか疑問なくらいですから。

また、アイスダンスの各カップル毎の演技構成点の差異になりますと、もう、お手上げです。シングル競技よりも難しい。しかし、アイスダンスはフィギュアの基盤となるスケーティングの粋を競うものでもあると思います。アイスダンスの演技構成点の説明が出来ないのに、シングル競技の演技構成点となると「知ったかぶり」してアレコレと自信たっぷり?に持論を展開するファンはどうなの?と思うのです。もちろん、これは私自身の反省も含めてですが。

とりわけ、「ジャッジの陰謀論」だの、「ジャッジの贔屓論」だのと、それらがあたかも「事実」であるかのように自信満々と語るフィギュアファンの頭の構造は一体どうなっているのでしょうか。


●昨シーズンのGPF女子シングルの例から、もう一つの「巷説」の誤りが見えて来ました。

2014グランプリファイナルのリザルト→こちらです

「演技構成点(PCS)は、建前は絶対評価だが、実際は相対評価である」という「巷説」は誤り。

6人の女子選手のショートプログラムの演技構成点をご覧ください。本郷選手だけは評価が6点台後半となっていますが、残り5人の評価は「団子状態」です。リプニツカヤ選手の31.66点~ポゴリラヤ選手の30.00点まで、ようするに、5項目の評価が7点台の後半に集まっています。まさしく「ドングリの背比べ」です。

グランプリファイナルでは選手の数は6人だけ。仮に、演技構成点が相対評価だとしよう。要は6人の差を明瞭にすることが相対評価の要ですから、各6選手の評価はもっと明確にバラケさせても良いハズです。相対評価の場合、点数そのもの自体に価値はほとんど有りません。差別化の為の記号くらいに思っておけば良いものだ。だから、極端な話、リプニツカヤ選手には9点台後半~10点を、ポゴリラヤ選手には6点台を、本郷選手には4点台をつけても良いのです。

しかし、実際はそうではなかった。5人の選手の演技構成点が団子状態になったのは、たまたまそうなったのです。各選手にあくまで絶対評価で点数を出したところレベル差が極小だったので、評価が似通った。そう考えるのが自然と思います。

☆ジャッジの陰謀論に否定的な人が、「演技構成点は相対評価」と主張するのは非常に矛盾しています。

もしも、絶対評価であるはずの演技構成点を相対評価で行っているとしたら、これは国際スケート連盟による悪質な詐欺行為だ。新採点法導入の2005年以来今日までずっと選手やファンを欺いて来たことになります。これこそ大陰謀ではあるまいか?

そもそも、技術点は絶対評価ですから、演技構成点が相対評価であれば、両者の点数を合計するなど、めちゃくちゃな話です。もうこれは採点競技としての体を成していないことになります。

相対評価という意見があっても良い。意見は自由です。しかし、「キム・ヨナさんの得点にジャッジの陰謀や不正があるという証拠は無い」とし、ジャッジの陰謀を断定するようなファンに反論をしている人達が、「演技構成点は相対評価」と主張するのは矛盾も甚だしいと言わざるを得ません。それこそ、証拠は無いのにジャッジやISUの「大陰謀」を唱えているに等しいと思います。

さりながら、以前にも述べたことがありますが、こうした問題の背景には、一般のファンに対するISUやフィギュア関係者の無為無策があると思います。演技構成点に関する踏みこんだ解説が何も無いのです。せいぜい、用語の意味をなぞるだけの、ごく初歩的な解説が時々見られる程度です。言葉では説明が難しい要素が多々あることは分かりますが、少しでも分かって貰おうとする努力もほとんど無いように見えます。

ファンは自ら勉強する必要はあります。いたずらに知ったかぶりで持論を展開するのは危険です。しかし、いくら勉強してもファンにはワケが分からないことが多いから、アレコレと想像し、推測し、憶測し、怪しみ、不信感を抱くのです。



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2015.10.30 | | コメント(7) | トラックバック(0) | 演技構成点とは



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プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、神仏を尊び、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者熟女(四十路半ばを過ぎた)ですが、よろしくお願いします。

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