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「風と共に去りぬ」の動画配信中止をどう思うか:愚見を少々




“人種差別を美化する”映画「風と共に去りぬ」、配信から消える
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この記事の内容について、一応の理解は出来る。

結論から言うと、私はこうした「焚書」のようなやり方には反対である。

これは一種のバックラッシュ(反動)の典型と思う。

アメリカのような民主主義国がこのような「焚書」めいたことを行うことは特に残念だ。

配信会社の措置は、今の世論に「阿ている」ようで共感出来ない。

言論の自由・表現の自由はどうなった?


映画「風と共に去りぬ」を観た人は、「この映画は黒人奴隷制を美化している」と思うだろうか?

白人と比べ黒人は劣るから差別されても仕方ない、と思うだろうか?

私は思わなかったけどなあ。

この映画では、むしろ悪い白人が随所に登場していたと思うが。また、北軍を馬鹿にする南部の人達の姿がどこか滑稽に描かれていたと思うが。

マーガレット・ミッチェルの原作では、当時の奴隷制度に対する批判や考察は見られない。
奴隷制度を前提にしたストーリーになっていることは事実だ。また、これが原作の欠点と言えば言えるかもしれない。だからと言って、「美化している」とまで言えるだろうか?

この映画のテーマは奴隷制度とは別の所にある。一人の大地主の娘が、南北戦争の時代を、敗戦の側に立った南部の悲惨な有り様の中で、無一文同様の境遇に陥った中で、いかに強く生き抜いたかにある。戦後、この映画を観た日本人は同じく敗戦から立ち直りつつある日本の姿と重ね合わせ、深い感銘を受けたのではあるまいか?

●「風と共に去りぬ」が配信中止なら、昔の西部劇の多くも配信中止だよ。

例えば、ジョン・ウェイン主演の名作「駅馬車」や「黄色いリボン」がその典型であるように、アメリカ原住民(インディアン)が悪者にされているのだ。「正義の味方の騎兵隊と、野蛮な悪者のインディアン」という図式は西部劇の定番だった。これらの映画こそ、騎兵隊を美化し、インディアン差別を助長していると言えまいか。しかし、これらの映画を配信中止にしろ!との声が聞こえて来ないのは何故だろうか?※

これに対し、「片割月は黒人ではないから、黒人差別について鈍感なのだ」と言われれば、「ごもっとも」と言うしかない。が、だからと言って、配信を中止することは飛躍ではあるまいか?と思う。

最近では、差別の象徴だからケシカランと、南軍を指揮した将軍の銅像が倒されたり、あげくの果てには過去のアメリカ大統領の銅像までが倒されつつあるようだ。

ここまで来ると、「言い掛かり」ではあるまいか?それはちょうど、旭日旗とデザインが少しでも似ているか連想させるものはダメだと難癖をつける韓国を思わせる。

「難癖・言い掛かり」と言えば、本の題名を忘れたが、男女差別に反対するアメリカ人女性が著作の中で日本語の女性差別を指弾していたのを思い出す。

つまり、「出戻り」「未亡人」「姦しい」等の言葉に女性差別の意味が込められていると批判しているのだ。ここまでは分かる。が、このアメリカ人女性はさらに、「男女」「夫婦」などの熟語で「男」が先に来るのは性差別だと言うのだ。さすがに、ここまで来ると、「言い掛かり」だ。

英語にも、「人類」を意味する言葉に、「mankind」がある。男で人類を代表しているがこれはいいのか?「人間」を意味する「human」は「hu」と「man」の合成語だろう。こんなことを言いだしたら切りが無い。


●反差別運動がヒステリー化すると、バックラッシュ(反動)が起きる。

かつて、黒人による公民権運動が盛んなころ、黒人回教徒(ブラック・パンサー)の教えに、「黒は美しい」という標語があったそうだ。これは、「白は美しく、黒は醜い」という白人主義に対するカウンターであり、バックラッシュだったと言える。歴史的・社会的背景を鑑みれば無理も無いのかもしれないが、こういう標語は、幼稚である。

ドイツは長い間、ユダヤ差別の象徴であるヒトラーの著書、「我が闘争」を禁書にして来た。確かに、歴史的背景を鑑みれば、禁書にしたくなるのも無理は無い。が、こうした「臭いものにはフタ」的な発想はバックラッシュだ。

逆に、イスラエルの方ではワーグナーのオペラを劇場で演じることを禁じて来た。ワーグナー自身がユダヤ人差別者であったこと、ワーグナーのオペラがナチス・ドイツで愛用・悪用されたからだ。

これも西洋におけるユダヤ人差別という歴史的背景を鑑みれば無理も無い。イスラエルの人々にとって、「ワーグナー」と聞くだけで不愉快だったかもしれない。

しかし、ワーグナーのオペラそのものにユダヤ人差別を助長するものは無いのだ。

そのイスラエルでもワーグナーの音楽がコンサートで演奏されるようになって来た。


●バックラッシュとしての「焚書」は国の形が大きく変わる時にも起きる。

明治維新では、廃仏毀釈の運動が起き、多くの寺の建造物や彫刻が破壊された。

中国の「文化大革命」ではベートーヴェンの音楽ですら「ブルジョアの産物」として演奏を禁止された。


●人間や国の「ヒステリー」と、「心の傷」は時間が解決するしかないのであろう。

前にも書いたことがあるが、チャイコフスキー作曲の「1812年」はナポレオン戦争に勝利したロシアを祝う音楽である。フランス人が聴いたら不愉快とまで行かなくとも、面白くは無いだろう。が、現在、フランスでもこの曲は「普通に」演奏されているそうだ。

また、ヨハン・シュトラウスⅠ世作曲の有名な行進曲、「ラデツキー行進曲」は1848年にイタリアを征服したオーストリアの将軍ラデツキーの名誉を讃える為の音楽である。が、イタリアでこの曲を演奏してはならぬ、という話は聞かない。

中国ではベートーヴェン他の西洋音楽は今では普通にコンサートで演奏されている。


●今、日本では「焚書」はあるのか?

私は、「ある」と思っている。

中国や韓国では、先の戦争で日本を悪者にした映画が多く作られて来た。おそらく、ヘボ映画が多いだろうが、中には名作もあるはずだ。が、私の知る限り、それらのDVDは日本には無い。

そりゃそうだ。そんな映画、日本人が見たら不愉快だからな。私は観たいのだが。

日本では、「日中戦争」を題材にした戦争映画を観る機会は稀で、「戦争映画」といえば、「太平洋戦争」での海軍の「活躍」を描いたものばかりだ。

日本政府が、「そんな中国映画のDVDを輸入してはいけない」と禁じているとは思えない。が、そこは日本得意の「忖度」と「事なかれ主義」で、「狡猾な焚書」が行われているのだろう。右翼の脅迫も怖いし。


アメリカ合衆国における黒人人口は4千万弱。アメリカ原住民は300万強。
黒人よりもさらに弱い立場にあるようだ。



2020.06.22 | | コメント(18) | トラックバック(0) | 歴史・文化



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プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、神仏を尊び、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者熟女(四十路半ばを過ぎた)ですが、よろしくお願いします。

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