爆走・迷走する地方自治の首長





暴走する地方自治 (ちくま新書)暴走する地方自治 (ちくま新書)
(2012/05/07)
田村 秀

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やはり、私と同じような危惧を感じている人はいたんですね。政治カテの「どっちらけ」で書きましたように、地方自治体の首長達がこのところ、やたらに「天下国家」を語りたがる傾向に強い違和感と不審感を抱いていましたが、この本の著者の田村氏はこの辺を詳しく、具体的に、説得力ある問題提起をしています。

著者は主に現役及び過去の知事や市長から、東京都の青島知事と石原知事、長野県の田中知事、高地県の橋本知事、三重県の北川知事、横浜市の中田市長、阿久根市の竹原市長、大阪市の橋下市長など、いわゆる「改革派」と称される首長達の評価と批判を展開してます。

この中で田村氏は改革派の首長に共通した特徴を4つ挙げています。

①抵抗勢力(敵)を明確にする…以前のように左巻き系の革新派首長が主に大企業や自民党、自衛隊、警察、アメリカを「敵」としていたのに対し、最近の改革派首長は、国や国家官僚、地方公務員、労働組合、市民運動家、中国を「敵」と位置づける傾向にあります。要するに右巻き系になっているわけですね。

「改革に反対するのは悪だ」と決め付け、相手を激烈に批判することで、政策論争を極めて薄っぺらで単純ななものにし、政策の中身を霞ませてしまう危険があります。物事を二分法で考えるタイプの人間には受けるでしょうね。

②危機を煽る…よく聞くセリフは「〇〇亡国論」「地方経済の崩壊」等。閉塞感のある日本で変革を強く訴えることは俗耳に入り易い。しかし、物事には「尊重すべき現状」もあるし、首長が変わる度にコロコロと政策が変わることは、膨大な金と時間とエネルギーの無駄使い繋がる。長野県の脱ダム宣言はその後どうなったか、です。

③マスコミにたびたび登場する…面白そうなネタなら、ダボハゼの如く何にでも食いつくマスコミにも問題があります。政治家を評価し、支持する際に「政策の中身と実績」より「知名度と見た目の威勢の良さ」で判断する人は多い(特に女性)し、このことを首長さん達は熟知しているので、喜んで出演しますね。まあ、宮崎県の元首長さんもそうですが、地方自治体の首長を足掛かりに、踏み台にして、国政への野心をギラギラとさせている人間にとって、全国区のマスメディアに登場することは何よりもの宣伝になります。

④外部からの人材登用に積極的である…このこと自体は評価出来る面もありますが、「顧問」「アドバイザー」など、常勤ではない非常勤の人材を臨時採用したり、首長と過去に繋がりのある人間を採用することで、職員との軋轢を生じるケースが少なくない。

著者は名古屋市長選挙後に朝日新聞に寄稿した北海道大学山口二郎教授の言葉を引用する。
「自民もダメ、民主もダメ。期待しては幻滅し、さまよってきた有権者はしびれを切らしている。芸達者な河村氏が、しっかりしない中央政党と顔の見えない地方議会への不信を煽り、民意の受け皿となったのが今回の結果だ。だが、金持ち以外は得にもならない減税策を、改革の特効薬のように主張し、争点を先鋭化した河村氏の訴えはデマゴギーだ。『小泉旋風』と一緒。構造改革で暮らしは良くなったか、思い出して欲しい。市民の熱狂は当分、続くだろう。だが、ツケを払うのも市民。鹿児島県阿久根市のように『こりゃダメだ』と気付いてくれるといいが」

このコメントは大阪市の橋下市長、東京都の石原都知事に対してもそのまま当て嵌るでしょうね。しかし、民意の「熱狂」は移ろい易く、冷めやすく、波に浮かぶ泡沫のように儚い。

得に、国の問題は地方自治とは比較にならないであろうことは、素人の私にも分かります。国の改革が適切に効果的に出来るくらいなら、とっくに出来ているでしょう。ところが、国策に何の実績も無い一首長が口先三寸の効果とマスコミの露出度の影響で、アンケートで総理候補のトップに挙げられる。恐ろしい時代がそこまで来ているようです。


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2012.05.22 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 歴史・文化



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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