藤森美恵子氏が世界選手権ジャッジに「物申す」




「フィギュアスケートDAYS vol.14」

この中で「藤森美恵子さんと振り返るフィギュアスケート11-12シーズン」での藤森氏のコメントが実に興味深かったです。


「…(高橋大輔選手の)隙のないプログラムというのはまさにこれだな、と思いました…中略…10月のジャパンオープンで見た時に、ランのポジションが変わっていたんですよ。コーナーを滑っていく時、アイスダンサーのように上体がきちっといい姿勢で動かないんです。

プログラム自体がとてもアーティスティックで、ジャンプの入り方も音楽を感じさせるフットワークから踏み切り、これから跳びますよという構えがありません。いきなり空中に上がって、降りたあともきれいに流れます。もはやスポーツの域を超えた高みにきていますね。

その高橋選手を抑えて世界チャンピョンになったのが、パトリック・チャンです。今シーズンは、グランプリシリーズでは調子が出なかったこともありましたが、シーズン最後ではいいものを見せてくれました。必ず彼ならきちっとやる、という安心感が生まれてきてると思います。

そして、スケールの大きな滑りですね。1ストロークの伸びの長さやスピード、パワーに溢れた男子らしい魅力的なフットワークはやっぱりうまいな、と思います。

でも、世界選手権の得点の5つのコンポーネンツマークすべてで(チャン選手が)高橋選手を上回ったのは、私は違うと思っています。プログラムの振り付けやインタープリテーション(曲の解釈)は、高橋選手の方が上でもよかったのではないかな、と思います。

フィギュアスケートのジャッジでは、ジャンプがよくて、エレメンツの加点が多いとコンポーネンツも全体に上げられてしまう傾向があります。エレメンツを採点するジャッジとコンポーネンツのジャッジを分ければ、順位にどのように反映されるのか興味があります。

現在の男子シングルは、高い技術レベルと円熟した演技や強い個性でアピールする表現力など、多彩な演技が開花し、見ごたえのある競技会に進化しています。チャンと高橋選手の演技のスタイルは、見る人の感性の違いで評価も別れるでしょう。」

ちなみに、世界選手権フリーにおける二人の選手のCHとINは次の通り。左の数字がCH、右がIN。

チャン 8.96   9.21
高橋  8.61   8.61

これが二週間後の国別対抗戦フリーでは、

チャン 9.25   9.21
高橋  9.39   9.50

もっとも、世界選手権ではチャン選手のPCSは全て高橋選手を上廻っています。国別対抗戦ではTRは同点で、それ以外は高橋選手が全て上廻っています。

国別対抗戦での当該ジャッジの評価が藤森氏の見解と一致したというよりも、この大会での二人の選手の調子や会場のファン達の「後押し?」がかかる結果を招いた印象を受けます。

しかし、藤森氏よりもファンの多くはずっと以前から「チャン選手が素晴らしいのは分かるけど、CHとINは大ちゃんの方がどう見ても上じゃないの?」との疑問をあちこちで語っていましたね。

素人ファンの意見は見当はずれな場合もあると思いますが、けっこう、急所を突いている場合もありますよね。

フィギュアとはまったく異なる世界の話ですが、デビュー当初から演歌歌手の八代亜紀さんを最も評価し、盛んに声援していたのは、トラックの運転手達でした。作曲家や作詞家、芸能プロダクションが八代さんの凄さ、素晴らしさを認めたのはそれより少し後だったそうです。

それと、ジャッジを技術点専門チームと演技構成点専門チームと分けたらどうか、というのも、ファンの間でも見られる意見です。

先の記事で触れた福留富枝氏と今回の藤森美恵子氏。共に国際ジャッジとして活躍してきたお二人が揃って、ファイブコンポーネンツについて「物言い」をしているのが興味深いです。

福富氏は「コンポーネンツは日本女子封じか?」と語り、藤森氏は「CHとINは高橋選手のが上では?」と語る。

ここでのお二人は、もしかして、ファン目線になっているのかもしれませんね。やはり日本人選手の演技をもっと高く評価して欲しいというのは、国際ジャッジとて素朴な感情、本音と思うからです。

従いまして、お二人の発言をあまりオーバーに受け止める必要はないかもしれません。ましてや、これを陰謀論と結びつけるような軽挙妄動は慎みたい。専門家のお二人ならではのフィギュア解説を味わうに如くは無し。

男子シングルは藤森氏の言うとおり、あらゆる点で今が最も見応えのある時ではないでしょうか。フィギュアスケートの面白さ、凄さ、奥深さが見ているファンにも分かり易く伝わって来ます。

この点、女子シングルはジャンプがやや停滞気味なのが少し残念です。4回転も3Aも跳ばず、5種類の3回転ジャンプの内、3~4種類だけしか跳ばない選手が多いですね。フリーのルールが変わり、2Aは2回まで、とされたことも受けて、3-3を跳ぶ意義が得点上、あまりないんですよね。。。

関連記事
スポンサーサイト

2012.06.07 | | コメント(6) | トラックバック(0) | ルール・採点・技術関連



コメント

はじめまして。

私は実際に記事を読んではいないのですが、一箇所だけ引っかかったので・・・。

高橋選手のジャンプは、「いきなり空中に上がって」の部分はたしかにそうなんですが、「降りたあともきれいに流れます」は、少なくとも世界選手権に関してはそうではありません。
ジャンプの着氷は全体的にあまりよくなかったです。
彼のジャンプはトップ選手の中では着氷が流れないほうで、特にコンビネーションジャンプは必ず詰まります。
世界選手権でチャン選手との明暗を分けたのはまさにその点だと思いますよ。
国別に関しては、着氷がかなり改善されていました。(コンビネーションジャンプは相変わらず詰まっていましたが・・・)

2012/06/08 (金) 08:28:26 | URL | ドロンパ #DNU.zdFw [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ドロンパ様、はじめまして。

>彼のジャンプはトップ選手の中では着氷が流れないほうで、特にコンビネーションジャンプは必ず詰まります。

ここ、まったく同感です。

さらにいえば、高橋選手は後半のジャンプがちょっと「小さく」なる傾向があると思います。

私も「2012世界フィギュア男子の結果」の記事で「ジャンプが詰まる」を取り上げ、

これがPCSにおけるチャン選手との差に繋がっている理由と感じていました。

それと、フリーではチャン選手のパワーが後半になっても全く衰えない…これも高く評価されているだろうと。

日本のフィギュアファンが読む雑誌でのインタビューですので、国際ジャッジ経験者の藤森氏といえども、多少は贔屓目もあるのかなあと(^<^)

逆のことは言えないでしょうね。

2012/06/08 (金) 21:47:42 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

ジャッジも人間

スカパーでの解説などを聞いていると、藤森さんも結構個人的な好みから評価点を決めている部分もあると感じますね。

女子の演技に関して、「最後のスピンで終わるときに、回転数を早く回る方が印象が良いから、そういう点をもっと改善して欲しい」というようなことを解説されています。

これはヨーロッパのジャッジなどが好む傾向らしいのですが、実際に点数にどう影響するのかは定かではありません。

藤森さんがジャッジに入っているならば確実に一人は点数が上がるのでしょうけどね。

結局、国際審判員といえども他のジャッジの総意ではなく、一意見になります。

高橋選手のジャンプに関しても流れも高さに関しても、片割月さんやドロンパさんが指摘している部分が存在します。

もちろんチャン選手もどの大会の演技も同じように滑れるわけではないので、中には流れが詰まったり、ジャンプの高さが小さくなることはあります。

ただその発生頻度が、高橋選手に比べると少ないと私は思います。

点数に反映されるときに、その継続性が競技の性質上高く評価され(一発屋を嫌う傾向があると思えます)、安定感を持つ選手がより高い評価を受けるという傾向はPCSに関してはいえるような気がします。

素人は高難度ジャンプの一発性を好みますが、ジャッジはそれよりも普段から地道な努力でなんでもないと思うところまで、繊細な注意を払う選手を好むというのは、採点競技にはありがちなことだと思います。

そこが記録競技との違いだとも言えます。

2012/06/09 (土) 09:07:28 | URL | バルタントモゾウ #- [ 編集 ]

最後のスピン

文脈から外れて失礼します(-_-;)

>女子の演技に関して、「最後のスピンで終わるときに、回転数を早く回る方が印象が良いから、そういう点をもっと改善して欲しい」というようなことを解説されています。

Yuka Sato 佐藤 有香 (JPN) - 1994 World Professionals, Ladies' Artistic Program
http://www.youtube.com/watch?v=hVv_ieuEYxs
たまたま、佐藤有香さんの演技を見ていたら、最後のスピンが、アップライトの高速スピンでした。演技があまりに素晴らしかったので貼っておきます。たしかに、一層盛り上がりました。それから、佐藤有香さんの表現力には圧倒的なものがあり(1m27sは吉田都かと思いましたw)、いままで、見過ごしていた自分が悔やまれるほど、素晴らしい演技でした。

2012/06/10 (日) 07:27:37 | URL | ghoti #/Jidnjo. [ 編集 ]

Re: ジャッジも人間

バルタン様、こんにちは。

>「最後のスピンで終わるときに、回転数を早く回る方が印象が良い

私もそう思います。

旧採点法時代はバックスクラッチスピンによる高速度回転で終わるケースが多かったので、余計そう思います。

同じように、選曲も、最後が静かに終わる音楽よりも、羽生選手のロミオのようにワアッと盛り上がって終わる方が印象が良いように感じます。

ジャッジはともかく、ファンの多くから拍手喝采を受けやすいですね。

体操競技でいえば、最後の着地がピタリ決まると印象が良いことと似ていますね。

>高難度ジャンプの一発性を好みます

野球でいえば、シングルヒット、バント、犠牲フライの1点より、ホームランによる1点の方が興奮します。

それと、独自性、ユニークさ、珍しさもね。必ずしも採点とは関係無いですけど。

例えば、誰か、本番の試合で3Lzー2Tを、3Lzは左回り、2Tは右回りでコンボを跳んで欲しいわ。

2012/06/10 (日) 14:43:45 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: 最後のスピン

ghoti様、こんばんは。

週刊朝日UST劇場「山口百恵を語ろう」(「クラシックジャーナル」中川右介編集長)

見ましたよ(^<^)

中川さんって、ああいう風貌だったんですね。

ああ、やっぱり、クラシック音楽好きの男性って感じね。

いかにもオッサンタイプで、イケメンじゃなかったわ(^。^;)

山口百恵が「いい時に引退した」かどうかは、一概には言えないかもね。

大ヒット曲はなくても安定したヒットを続けられる歌手は、タレントとして長命を保つと思うから。


吉田都さんのバレエは、一度だけ生で鑑賞したことがあります。

西洋人のようなパワーと躍動感にはさほど恵まれていないかもしれませんが、並外れた柔らかさと繊細さ、腕の動きの微妙なタッチ等、素敵でした。

これぞ大和撫子のきめ細やかな舞ってところでしょうか。

2012/06/10 (日) 19:42:21 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

フリーエリア

検索フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR