丹羽中国大使の発言は「正常」だ
「日中関係に深刻な危機」=丹羽大使、尖閣購入計画を批判―英紙・時事通信 6月7日(木)
【ロンドン時事】
7日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、日本の丹羽宇一郎・中国大使とのインタビュー記事を掲載。丹羽大使はこの中で、東京都の石原慎太郎知事による沖縄県の尖閣諸島購入計画について、「実行に移されれば、日中関係に極めて深刻な危機をもたらす」と強く批判した。
同大使は「(日中関係改善に向けた)数十年にわたる過去の努力が水泡に帰すのを許すことはできない」と強調。購入計画は法的な問題に直面する可能性があるほか、購入のための事前調査でさえ、外交的には中国側を刺激する恐れがあると懸念を表明した。
丹羽大使はまた、日中関係の危機は両国間の経済関係にも影響を及ぼしかねないと警告した。
官房長官、中国大使発言は個人的見解=「職権超えている」と前原氏
藤村修官房長官は7日午後の記者会見で、丹羽宇一郎駐中国大使が英紙のインタビューに対し、東京都による尖閣諸島購入計画を「日中関係に極めて深刻な危機をもたらす」と批判したことについて、「個人的見解を述べたということで、政府の立場を表明したものでは全くない」と語った。藤村長官は「外務省から注意したと報告を受けている」と説明した。
民主党の前原誠司政調会長は記者会見で「大使がそのような発言をするのは職権を超えている。適切な発言ではない。(丹羽氏の)見識が問われる」と批判した。
丹羽大使の発言に保守派の政治家や論客、ネットウヨ等が大いに業腹を煮やすのは分かるけど、日本政府からの批判はいかにも奇妙であり、面妖だ。
だって、丹羽大使の発言内容は、40年前に日中国交正常化してからずっと自民党政権~民主党政権の一貫した立場と同じじゃない?まさに、この通りでしょう。
都知事による尖閣諸島購入の動きに対して、政府は「余計なことをしてくれた」というのが本音でしょう。領土問題は存在しないのであれば、むしろ、都も国もわざわざ購入する必要はない。そうでなければ自民党政権時代にとっくに購入出来たでしょう。
それでなくても国会議員や地方自治体首長による度重なる「南京事件は無かった」「日中戦争は侵略では無い」発言で中国側を怒らせ、その度に「政府見解とは異なる」と弁明して来た歴史がある。
こうした中で石原氏のパフォーマンスは日本政府こそ業腹を煮やすことであろう。
丹羽大使はそんな政府の立場を代弁したのではないだろうか?
官房長官の「日本政府の立場を表明したものではない」はトンデモない。むしろ「良くぞ言ってくれた!」と讃えてもよいくらいだ。
日本の経済界も丹羽大使の発言に内心では共感しているのではないか。
以上の点から、私は丹羽大使の発言は少しも「異常」ではなく、政府の代理人として「正常」だと弁護するものだ。
これを反日、売国、トンデモ発言と非難するなら、それはこの40年間の日本政府のあり方こそ非難されるべきだと思う。自民党も「丹羽大使を更迭しろ」などとよくもヌケヌケと言えるものだ。
ただし、大使の職権うんぬんはよく分からない。もしかすると、問題は発言内容ではなく、他の国のメディアの取材で発言すること自体が大使の「ボーンヘッド」だったのかもしれない。非難されるとすればその点であろう。しかし、丹羽氏もよほど腹に据えかねていたのであろう。
丹羽大使は伊藤忠商事の会長を務めた人らしい。「両国間の経済関係にも影響を及ぼしかねない」との発言は、付けたしで言っているように書かれているが、案外こちらが一番言いたかったことかもしれない。以前の記事で述べたように、中国は日本の最大の貿易国だから。経済流通の蛇口を閉められたら、先に干上がってしまうのは日本の方だ。
- 関連記事
2012.06.10 | | コメント(7) | トラックバック(0) | 政治・社会