スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.-- | | スポンサー広告



田村明子氏著「氷上の舞」の危うさ





氷上の舞 煌めくアイスダンサーたち氷上の舞 煌めくアイスダンサーたち
(2012/04/20)
田村 明子

商品詳細を見る



フィギュアファンであれば田村明子氏の名を知らない人はあまりいないであろう。しかし、一般的にはさほど知名度は高くは無いと思う。

フィギュア人気が高いとは言え、日本人にはあまり馴染みの無いアイスダンスの本を出版することは大変と思う。田村氏と出版社の努力と英断に敬意を表します。

五輪や世界選手権のメダリスト達やコーチ陣の活躍を中心にアイスダンスの変遷が、田村氏のこなれた文章によって一応時系列に述べられているので、とても読み易く頭にも入り易い。

ただし、頭に入り難いのは…選手やコーチの名前が沢山(必ず男女の組合せだから余計に多い)登場し、しかもロシア人の名前は日本人には非常に記憶し難いので、メモしないと混乱してしまう。


最近、イゴール・シュピルバンド氏がアークティックフィギュアスケートクラブを解雇されたという「ビッグニュース」が飛び込んで来た。何故これがビッグニュースなのかは、「氷上の舞」を読めば実に良く分かるのだ。シュピルバンド氏がアイスダンス界でどれほど大きな存在であるかが。

トーヴィル&ディーン組のエピソードも面白かった。
彼等がボレロを編集すると、どうしても時間が4分28秒になってしまい、フリープログラムの4分10秒以内に収まらなかったこと、そこでルールに沿って、冒頭の18秒間はスケート靴のブレードを氷につけずに膝をついて上半身のみを使った振り付けをゆったりと始めるという構成にしたこと、これが災い転じて福となり独特の世界を醸し出したこと、プロに転向して彼等は大スターとなり、田村氏が1993年のスケート・オブ・ゴールドで初めてボレロを見た時、これが1500回目の演技であったこと…。

トーヴィル&ディーン組の活躍の後、イギリスのアイスダンスが振るわなくなった理由にも田村氏は触れる。つまり、彼等はアイスショーやテレビ出演等に時間を取られ過ぎた。その為、コーチとして次の世代に彼等の作り上げた偉業を引き継ぐことが出来なかったと。

逆に旧ソ連やロシアのメダリストは決して大スターにはならないので、ショーだけでは食べて行けなかった。その為、コーチとして生きて行くしかなく、これが現在世界中でロシア人がコーチや振付師として活躍し、ロシアと北米に優れたアイスダンサーを生むことにつながったと。

このように長年フィギュア界を取材して来た田村氏ならではの、アイスダンス界の知られざるドラマが展開されて面白い。

しかし、本の読後に爽やかさはなく、後味の悪さが残る。何故か?

一つ目の理由は、選手とコーチ、コーチと弟子とのドロドロとした人間関係、ライヴァル選手やライヴァル国の間を巡る騒動や口合戦などにもページが多く割かれているからだ。不倫疑惑にまで触れている。

この手のスキャンダラスでゴシップ的な内容は俗な意味で面白いことは事実だ。ただ、いくらフィギュア界に詳しい田村氏といえども、他人の人間関係の「真実」は全て知り得ないと思う。テレビドラマならともかく、こうした内容は脚色されるのがオチだ。

田村氏のスタンスがハッキリしない。
この本により読者には主にアイスダンスの魅力を伝えたいのか、アイスダンス界の魑魅魍魎(事実関係は不明で)を暴露したいのか。

二つ目の理由は重い内容だ。最近、田村氏が傾斜しつつある「ジャッジ不信」である。アイスダンスの採点・順位を巡る疑惑やトラブルがいくつも出てくるのだ。
「イタリアの組がトップに立ったのはチンクアンタ氏へのはなむけか?」「オリジナルでこの組がまさかの首位とは現役復帰を祝す意味があったのか?」「あれが一位など有り得ない」等、田村氏自身だけではなくコーチや選手達の口も借りて述べられているのだ。

さらには、「(イタリアの組が優勝を逃した)某大会の試合直後にISU会長がアイスダンスの技術委員長で当該の大会のレフリーとの会談を求めたと言われる」「〇〇の後押しがあったかもしれない」などの内容も述べられている。

そして、疑惑の採点の背景にも触れ「政治的影響か不正か」となる。狭いフィギュア界においては人間関係や親交の濃い薄いが採点に何らかの影響を及ぼすかもしれない。しかし、それは不正ではないと。

田村氏は疑惑の採点について深く分析するわけでも鋭く追求するでもなく、ただ疑惑だけを読者にポンと投げかける。個々の演技の評価は田村氏も語っているがあくまで印象に過ぎない。ルールに沿って分析したものではない。

仮に「情実ジャッジング」があったとしても、それは不正とは根本的に異なり、やむを得ないだろうと結論を結びたいようだ。

読んでいていささかウンザリしてくる。

本の副題は「煌めくアイスダンサーたち」となっているが、田村氏はどうしても「光と影」を語りたいようだ。さりとて「フィギュア界の問題を斬る!」というほどの内容でもない。報道人らしく事実を分析するでもない。中途半端だ。この本の主旨、目的は何?アイスダンスの世界の素晴らしさを読者に伝えたいのではなかったのか?

素人目にはシングル競技以上にアイスダンスの採点は分かりにくいし、優劣の判定も難しい。だからこそ、田村氏は読者にいたづらな憶測や不信感を招くようなことを中途半端に書いて貰いたくない。

それよりも、アイスダンスの鑑賞を助ける為のルール解説、主な選手達やコーチのデータを表にする等、もっと基本的な事にも力を注いで欲しかった。

カナダのヴァーチュー&モイア組とアメリカのデイヴィス&ホワイト組の特長についてはある程度踏み込んだ分析がされていて、実に読み応えがある。私だけかもしれないが、素人目にはアメリカ組の演技の方が動きが速く、運動量も激しくて見応えがある。先日の国別対抗戦でもアメリカ組の方が拍手が多かった。しかし、実はカナダ組の演技が玄人の目、ジャッジの目にはより見応えがあるようだ。アイスダンスの奥深さを覗いた田村氏の本領が発揮されているページと思う。

なお、「情実ジャッジング」についてだが、仮にこれが事実とすれば私はこれ自体が不正に繋がる大問題と思う。大相撲の八百長問題で議論になったのも「情実相撲」の存在だった。テレビ番組で相撲解説者・評論家として有名な人が「人間なのだから情実相撲があったとしても仕方ない」くらいのこと言っていたのには呆れたものだ。

実行者が選手や力士本人であれジャッジであれ「情実」そのものが真剣勝負を期待して見に来る観客に対する裏切行為だ。さらに「情実」とは無縁な選手には全くアンフェアなことだ。

なお、アイスダンサーは同じ実力であれば美人、美男子、背が高く手足が長い等、容姿端麗な方がジャッジ受けが良いであろう(シングルやペア競技はさほどでもない)との田村解説には同感。これもある意味では「アンフェア」かもしれないが。。。


関連記事
スポンサーサイト

2012.07.12 | | コメント(6) | トラックバック(0) | アイスダンス



コメント

情実はどこにでもある。

例えば就職採用。

同じ成績ならば、間違いなく親がその会社にいるかどうかは影響を及ぼす。
正直な話、公務員も例外ではない。今ではかなり減ったとは思うが、0ではない。

そこには、「あの人の子供なら、安心だろう」という、憶測も含まれるからだ。

ジャッジの世界にも予定調和というものが、少なからず存在しているような気はする。

ある程度予想通りの演技をしたならば、それまでの実績から「やっぱりこちらが上みたいな気がするわ」という、ファージ思想が存在しないとは言いがたい。

逆に言えば、存在するとも言いがたい。

私がどっちの見方をしているのかというと、半々で見ている。だからこそ採点競技は面白い。

結果が演技そのものの密度を表すとは言い切れない。

採点要素には現れにくいatmosphereの部分まで厳密に比較採点をする事は、おそらくありえないことだと思う。

芸術は存在しても明確な定義が出来ないというものに似ている。

2012/07/14 (土) 01:07:10 | URL | バルタントモゾウ #- [ 編集 ]

Re: 情実はどこにでもある。

バルタン様、こんばんは。

「情実」ですが、就職における採用の判定と採点競技の採点とは少しステージが違うような気が(^。^;)

>それまでの実績から

ジャッジングはあくまで一発勝負が建前であっても、過去の実績が採点の上である程度の影響を与える可能性は、全く無しとは断定出来ないでしょうね。

しかし、これは情実ジャッジングとは少々異なるような気がしますが。

つまり、有力者の誰それのメンツを立ててやろう、とか、選手にはなをもたせてあげよう、とか、彼女は大怪我や大病から頑張って戻ってきたから、厳しすぎては可哀想とか、

こういう何かに「配慮」するようなジャッジングは頂けないと思いますし、ジャッジがそんなことを考えているとは思いたくないです(-_-;)

2012/07/14 (土) 01:56:57 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

はじめまして

片割月さま、こんにちは。初めてコメントいたします。バンビーナと申します。
いつも楽しく読んでおります。

「氷上の舞」、総じて面白かったですけど、田村さんの恣意が鼻につく内容でした。

中でも特に気になったのは一箇所、タラソワとシェイ=リーン・ボーン&ビクター・クラーツに
ついて書かれた、96、97ページの部分です。

「苦労人のタラソワは、たとえジャッジに不満があっても、それを公言することは百害あって
一利なしであることを熟知していたのだろう。ボーン&クラーツは、タラソワに移ってからは、
ジャッジに対する不平不満をいっさい口にしなくなった。」

この部分だけ読んでいると「カナダのボーン&クラーツは自分たちの技術の至らなさを棚
にあげて、ジャッジに文句ばっかり言ってけしからんかったが、偉大なるタラソワ先生が彼
らの性根を入れなおした」みたいなストーリーが見えます。
(余談ですが、このボーン&クラーツとタラソワの章は、「氷上の光と影」にもちょっと出てき
ますね)

が一方ワールドフィギュアスケート第8号(02年長野世選の記事が主です)に、田村さんに
よるビクター・クラーツへのインタビューが載っているのですが、この中で、

「タラソワに移ってから政治的な話をしなくなったが、彼女の影響か?」

という田村さんの問いかけに対し、ビクターは「そうではない」ときっぱりと否定しています。

引用は長くなるので避けますが、ビクターが続けて言ったことを要約すると、以下のような
感じです。

「ルールへの批判はもう言い尽くしたから言わなくなった。長野五輪以降、アイスダンスの
ルールが変更されたのは、自分たちのこれまでの発言のおかげもあると思う。しかしこの
競技のシステムにはまだ改善すべき点はいろいろある」

うーん、昔の雑誌のインタビューを併せると、単行本のようなストーリーにならないですね…。

田村さんの過去記事を全て知っているわけではないので、気づいたのはこのくらいですが、
自身があたった記事ですらこのようなディレクターズカットをしているとなると、田村さんが
やる海外の記者の記事引用なんて、相当な眉唾なんだろうなあと思うしかないです。

それでもあの田村さんの本である以上、これがスタンダードになってしまうのでしょうね。
つくづくライターの層の薄さを嘆かずにはいられません。

すみません、長々と失礼致しました。

2012/07/14 (土) 21:36:02 | URL | バンビーナ #qX9Udpec [ 編集 ]

Re: はじめまして

バンビーナ様、はじめまして。

>いつも楽しく読んでおります。

ワッ!嬉しいお言葉です。v-290

ワールドフィギュアスケート第8号の紹介、ありがとうございます。とても参考になりました。

バンビーナ様は私なんかより、しっかりと熟読され、きちんと理解されていますね。

とても知的なコメントに敬服いたします。

>相当な眉唾なんだろうなあと
>ライターの層の薄さ

ソニア・ビアンケティさんのような権威のある「ご意見番」が日本には居ないですね。

サッカーで言えば辛口で有名なセルジオ越後さんのような人です。

まだ日本はフィギュアの歴史が浅いというか、格付けが高くないからかな。。。?

田村明子氏はこのところ、どちらかと言えばジャーナリストの目線ではなく、
ファン目線に近い印象です。だから内容的にややチープな感想を抱いてしまいます。

残念です。

バンビーナ様、今後ともよろしくv-410

2012/07/15 (日) 00:37:30 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

私、以前アンコウさんのブログで

>田村さんは1993年からずっとフィギュアスケートにどっぷり浸かって数多くの関係者に綿密な取材を進めてきました。
>また、特定の個人選手に対する極端な思い入れもありません。(=偏見が無い)
>なので、私はこの人の著作をかなり信頼しています。

なんて書いたんですけど、その行為を今は心から後悔してます。
ロクに根拠もなく「疑惑」を読者に提示するって、ただのゴシップ記事じゃねーかと思うんですけどね。ほんと。

宇都宮直子さんなんかは以前、点数について「3Aにもっと敬意を払うべきだ」という、若干お花畑が入ったことを書いていましたが、浅田さんを想う「純粋真っすぐさん」という印象で悪意は感じません。
でも、今の田村さんは知った上であえて読者を混乱させるようなことを書いているような感じがして、とても嫌な気分になります。

ほんと最悪。

2012/07/15 (日) 03:25:06 | URL | きれじろう #EBUSheBA [ 編集 ]

Re: タイトルなし

きれじろう様、おはようございます。

>私はこの人の著作をかなり信頼しています。
>なんて書いたんですけど、その行為を今は心から後悔してます。

いや、田村氏の方が変ってしまったのかもしれません。

事実やデータを丹念に調べ、なるべく冷静に分析して行く、という報道の基本がやや疎かになり、

悪い意味でファンと同一線上にあるような野次馬的な目線とチープな主張が鼻につきますね。

受け狙いで面白おかしく書いて「売らんかな」の意味もあるのかもしれませんが…。

そうだとすれば、ある意味、読者(フィギュアファン)をバカにしている感じもします。

まあ、報道人も政治家もどこか本音では読者や国民をバカにしていると思いますが(笑)

2012/07/15 (日) 10:19:20 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

フリーエリア

検索フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。