荒川静香さんが再び語る、フィギュアの採点とジャッジ





「スポーツ・コミュニケーション」において荒川静香さんが二宮清純氏と再び対談をした。荒川さんの「猫ジャッジ」で有名になった3年前の対談に継ぐ2回目。

今回の方がジャッジや採点に関して、より具体的で突っ込んだ内容になっているにも関わらず、前回ほどネット上では話題になっていないようだ。何故か?

主たる箇所を抜き書きして私なりの感想を添える。


荒川:…いくら演技に納得がいかないからといって、キス&クライに座らないと罰金をとられる決まりになっています。しかも目の前にモニターがあって、自分がどう映っているかが常に出ている…。

罰金…それはまあそうでしょうね。キス&クライはトランポリン競技にもあるようですが、これはある意味、フィギュア競技の象徴みたいなものですね。

二宮:他のスポーツだとジャッジに納得がいかないと直接抗議に行く選手もいますが、フィギュアスケートでは、そういったシーンもほとんど見かけないですね。
荒川: いくら抗議しても、点数は絶対に覆りませんからね。自己評価と他人の評価は必ずしもリンクしない。その点は選手たちも割り切りができているのだと思います…。

そうなんだ!メディアには書かれないことだけど、実際は抗議する例はあるんですね。それにしても、いくら抗議しても点数は絶対に覆らないとは、ここがフィギュア競技の、良くも悪くも、伝統というか慣習か。

私は思う。公表されない「抗議」はあまり意味が無いと。観衆やメディアのいる前で異議申し立てが行われるシステムが無い限り、採点や判定が覆されるワケが無いと思うのが自然かと。

一般的に審判・ジャッジにミスが少なくないことは、ロンドン五輪でもキレイに証明されている。国家官僚じゃあるまいし、フィギュアスケートだけが例外的に「技術役員やジャッジは無誤謬」は有り得ない。より公明正大な採点を実現する上で、今後の課題と思う。


二宮:…ジャッジも国によって特徴はありますか?
荒川: もちろんです。ヨーロッパのジャッジは、やはり自分たちの国や地域の選手に対する評価が甘い面があるのかなと思います。一方、日本人のジャッジは逆の傾向が強い。日本の選手には厳しめの採点をすることが多いですね。「自分たちの国の選手をひいきしている」と思われたくないとの気持ちが無意識のうちに働くのかもしれません。

ここ、日本のジャッジに関して多くのフィギュアファンが感じていることと同じだ。しかし、私は日本のジャッジは賞賛されこそすれ、(一部の浅田ファンのように)非難されることではないと思うが。

二宮:採点競技は主観が入るから本当に難しい。現在は技術点、構成点といった具合に細かく分割して点数をつけるシステムになっていますが、かえって一般のファンには分かりにくくなっていますね。
荒川:細かく点数は出ているように見えますが、かえって「なぜ、これが8点で、これが7点なのか」という説明がしにくくなっていると思います。曖昧かもしれないですが、昔のように6点満点でジャッジする方式のほうが良かったのかもしれません。

荒川さんは新採点法へのアジャストに苦しめられたこと、選手としては新採点法の洗礼を受けたのが2ヵ年だけだったこと…以上のことから、旧採点法への思い入れが強いのかもしれない。私は何のかんの言っても、新採点法の方が公平性という点でも優れたシステムと思う。

荒川:芸術に対して点数をつけること自体、そもそも大変な作業です。ところが、点数を細かく計算するようになったために、最近は「世界最高得点が出ました」という記録に注目が集まるようになっています。そうすると、「世界最高得点=最高の演技」という、少しフィギュアスケートの本質とは異なる見方が生まれてしまう。本人の感覚では決して「最高の演技」ではなくても、世界最高得点が出ると周囲は「最高の演技」だったと思いこんでしまうんです。でも、後になってみると、人々の記憶に残っているのは演技そのものよりも、得点になってしまいます。これは選手にとっては不幸なことではないかと思うのです。

なるほどなあ。トップ選手としての経験が無いとなかなか触れられない問題指摘かも。定量化が不可能な数値で、シーズンベストとかパーソナルベストとかも大した意味が無いのだから、ISUは「○○ベスト」の類は全て止めた方が良いと思う。

荒川:…ある選手がショートプログラムで同じように滑ったのに、ある試合では70点で、別の試合では75点になることがあります。では、この5点の差はどこにあるのか? これを明確に説明するのは難しいでしょう。あえて説明するとすれば、それは期待値の差です。高得点を期待される選手が、その通りの演技をすれば高い評価が下されます。

荒川:たとえば韓国のキム・ヨナ選手がバンクーバー五輪のシーズンにどんどん得点を上げたことに対して、「点数を高くつけすぎだ」と批判する意見がありました。でも、彼女はジャッジが「このくらいやってくれるだろう」という期待に対し、素晴らしい演技で応え続けた。その積み重ねで得点が伸びていった側面があります。でも、多くの方々は目の前の演技だけで評価されると思っていますから、「こんなに点数が高いのはなぜ?」という疑問がわいてきてしまうのです。

荒川:キム・ヨナ選手やエバン・ライサチェク選手のバンクーバー五輪での金メダルは“積み重ねの勝利”と言ってもいいでしょう。五輪だけの演技で高得点をたたき出したのではありません。シーズンを通じて安定した演技が、ショートプログラムでの世界最高得点につながったのだと思います。いい演技を続けていると、ジャッジが「この選手はこのくらいできる」という安心感を抱くんですね。すると、同じ演技をしても得点が少しずつ上がっていく。逆に、ちょっと調子が悪くても良かった時の印象が強いから、それに救われて点数が高めに出る傾向があります。

二宮: 一方、銀メダルだった浅田真央選手は五輪前、グランプリファイナル進出を逃すなど不調でした。それがジャッジの印象に少なからず影響を与えたとの考えですか?
荒川: 真央ちゃんもバンクーバーのショートプログラムではミスがなかったのに、点数では5点近くの差が出ました。その原因を探るとシーズンのスタートで、やや評価を落としていたことがあげられます。2008年に世界選手権で優勝した後、なかなか思うような演技ができなくてジャッジへの印象が変わってきていました。五輪前はいい演技を続けていたにもかかわらず、評価は急には上がらない。それが得点差につながってしまったのかなと感じました。

そうか…今回の対談内容が前回ほど「浅田ファン」の間で取り上げられない理由はこれだな。結果的に「ヨナ選手の『銀河点』を擁護」する結論になっているから面白くないのだろう(苦笑)

荒川さんの意見では、採点=当日の演技の出来映え+過去の実績、ということになる。荒川さんは具体的に言及していないが、過去の実績は、特に演技構成点のことを指しているとするのが妥当でしょう。

もちろん、これは選手の立場としての荒川さんの意見である。ジャッジにはジャッジの言い分があるでしょう。ジャッジも各方面から色々と批判されたり疑義を突きつけられたりしているのだから、そろそろ誰かから「反論」を聞きたいものだ。城田女史や天野氏からとか。

実績ということは「ジャッジは演技そのものに対してだけでなく、選手に対しても採点している」ことに通じる。音楽のコンクールで演奏者の顔を見えないようにして評価することもあるのはそれを防ぐ為だそうだ。

私は「過去の実績」が採点に影響しているとは考えたくないけど。


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2012.08.22 | | コメント(8) | トラックバック(0) | ルール・採点・技術関連



コメント

わははは

ほとんど、私の今まで書いてきた中身と同じだな。

荒川さんと同じ目線で見ていると、ふんぞり返る。<(`^´)>エッヘン

2012/08/24 (金) 00:52:42 | URL | barutantomozou #- [ 編集 ]

御無沙汰です。
無理をしないようにしましょー。

で、荒川さんと二宮さんの対談、私も読みました。

>あえて説明するとすれば、それは期待値の差です。

実際のところ、それぞれの競技会でジャッジは「別人」ですし、リンクの具合や選手自身の調子によっても変わってくるのでしょうから、私の場合はこの部分を読んで「あれ?」でした。
荒川さんとしてはファンに何とか理解してもらおうと考えた末の発言なんでしょうけど、ちょっと強引な論理展開かなぁ、というのが正直な感想です。

もちろん人間なんで荒川さんのおっしゃる要素もあるでしょうけど、これを主要な要因にして論じてしまうと、不正が存在する派の方々に対して逆効果かなぁ、と思ったり。

で、荒川さんの著作を拝見していて、以前から疑問に思っていたのが、ジャッジと荒川さんてどの程度の情報連携してるんだろ?ということだったんです。
例えば「何をもって得点を決めているか明確ではありません」と著作で明言されてますけど、それが「ジャッジに徹底的にヒアリングして、その結果、明確ではないと『ジャッジが明言した』」のか、「明確ではないと『荒川さんご自身が思った』」のかを知りたいんですよね。私。

ファンにルールを浸透させるには、もうちょっと情報連携、情報共有をしてほしいなぁ、というのが私の本音です。

今回の荒川さんのご発言は、ルール浸透の為の「初めの一歩」という感覚で捉えています。

2012/08/24 (金) 21:50:45 | URL | きれじろう #EBUSheBA [ 編集 ]

こちらには初めてのコメントになります。

>今回の対談内容が前回ほど「浅田ファン」の間で取り上げられない理由

私はむしろ、「まあ、そういうこともあるかもね。でも荒川さんの場合は期待値とか安定とかには縁がなかったから違うわよねえ」という意見が多かったからではないかと思いました。
荒川さんは、プレシーズンの世界選手権は9位、オリンピックシーズンはグランプリシリーズで2回表彰台にのったものの、グランプリファイナル出場を逃し、国内選手権は3位でした。まさに背水の陣でオリンピックに臨んだものの金メダル。
「結局はいい演技をすればいいんじゃね?」と、みんなが結論したからではないでしょうか。
私は「実績点」の存在を否定しませんが、それをひっくり返すことも可能だと思っています。

2012/08/24 (金) 22:29:06 | URL | 神無月 #- [ 編集 ]

Re: わははは

ガハハハ…バルタン様はきっとそう言うんじゃないかと予想していましたよ(-^〇^-)


2012/08/24 (金) 22:49:30 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

きれじろう様、お久しぶりです。

お言葉、ありがとうございます。

あ、私もきれじろう様の荒川さんに対する疑問は抱きつつ読みました。

プロスケーターがジャッジと「会話・情報交換」する機会はどれだけあるのかなあとか。

現役時代の経験や情報が主とするなら、ちょっと古いですよね(~_~;)

荒川さんも「強いて言えば」くらいのこと言っているから、本人なりの経験から照らした感覚なんでしょう。

だからこそ、現役ジャッジの方からの「異論・反論」を希望するのですが。。。

2012/08/24 (金) 23:12:41 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

神無月様、はじめまして。

アンコウ様のブログでお目にかかる神無月様ですよね?

>「まあ、そういうこともあるかもね。でも荒川さんの場合は期待値とか安定とかには縁がなかったから違うわよねえ」という意見が多かったからではないか

なるほど、こういう解釈もあるんだ!
ただ、「安定」は分かりますが、期待値とは縁がなかったですか?

>「結局はいい演技をすればいいんじゃね?」と、みんなが結論したからではないでしょうか。

全く正論と思います。

そうだとすれば「浅田ファン」に対する私の偏見があるのかな(^。^;)

「真央選手がいい演技をしてもそれに見合った評価をしてくれない。ヨナさんには過大評価」が「浅田ファン」の抱く不満と思っているので。

>私は「実績点」の存在を否定しませんが、それをひっくり返すことも可能だと思っています

はい、私も同感です(#^.^#)

それに、昨季のフェルナンデス選手のように、その前の期からドーンとPCSがアップする例もありますし。

2012/08/24 (金) 23:33:36 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

そうです、アンコウ様のブログによく訪問している神無月です。
片割月様のブログは最近知ったので、時々拝読しております。

>期待値とは縁がなかった
この言葉については少し語弊があったかもしれません。
荒川さんはグランプリシリーズでは、2戦とも3位で、スルツカヤ、コーエンよりも順位が下でした。つまり、「3番手としての期待値」はあったかもしれませんが、「金メダリストとしての期待値」については、オリンピック前は低かったと思います。

浅田ファンについてですが、ネット上では声が大きい人が目立つのであって、普通の人もたくさんいると思いますよ。ただ、数が多いからいろいろな人がいるのであって。
陰謀論者、悲観論者、自分の思い通りにならないのが気に入らなくて怒りの矛先が真央選手に向く人、「真央ファンだけど真央を批判できる自分かっこいい」系の人、その他諸々。まさに玉石混合。

2012/08/25 (土) 00:48:47 | URL | 神無月 #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

神無月様、おはようございます。

>「金メダリストとしての期待値」

なるほど、これは分かります。
期待値を満たす=高得点とは別の話しですね。

私がカッコ付きで「浅田ファン」とした意味は、ネット上で多い陰謀論ファンです。

何故なら、嘗ての私はそういったタイプに近かったからです(^。^;)

アンコウ様は「玉石混合」の「玉」ですね。私は「石」でありんす。

2012/08/25 (土) 10:22:16 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

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Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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