活字中毒の放浪・その1





下記の読書感想は私が読んだ順番・時系列に沿ったものではありません。



坂野潤治「日本近代史」(ちくま新書)
460ページと、新書版としては厚く読み応えがある。幕末~1920年代までの政治史を中心とした内容。良質な解説と思う。


林房雄「大東亜戦争肯定論」(番町書房)
日本弁護論の古典であろう。驚いたことは、林氏は思ったほど「過激」なことは言っていない。林氏は言う。大東亜戦争は幕末期から遡って見なければいけない。島津斉彬、吉田松陰など、彼等が既に「列強国に対決する戦略として、日本、中国、朝鮮の3国が協和すべき」との主張をしていた。これまでの戦争は列強からの侵略に対抗するべく亜細亜の解放という長期的視野に立つ自存自衛の為の戦いであった」と強調する。「ただし、戦略上のミス、上層部の堕落等により、日本の行為は結果的に侵略と非難されることになった」とも認めている。

林氏が最も批判するのは歴史の上っ面のみを捉え、マルクスの唯物史観にかぶれ、一方的に全否定的に先達を断罪する左翼学者に向けられている。この本が書かれた1960年代はまさに左翼史観が猛威を振るった。この本はそうした時代にあってはそれなりに意義があったのであろう。

林氏は「左翼史観を押し付けるな」と批判するが、大日本帝国による亜細亜解放論も、アジア諸国への「押し付け」であったのではないか、とは考えなかったようだ。
しかし、最近の右翼評論家達の諸本よりも、主張も文章のタッチも遥かに格調が高いと思う。


将口泰浩「キスカ島奇跡の撤退・木村昌福中将の生涯」(新潮文庫)
戦争の本は概して陰惨で辛い内容のものが多いが、これは痛快な実録だ。キスカ島の日本陸海軍将兵5183名の全てを敵の厳重な包囲下から救出したという驚くべき記録だからだ。

キスカ島撤退作戦を指揮した木村昌福海軍中将は指揮官としてだけでなく人間的にも立派な軍人だったそうで、部下からも非常に尊敬された。人間心理にも通暁していた。例えば部下の一人は「人を誉めて自慢はされず、ぽつりぽつりと何気なく話される罪のない失敗談がどんなにそれを聞く人の気持ちを快いものにするかを強く印象付けられた」と。

木村中将は指揮官として守るべき3つの項目を挙げている。この内容は現代のビジネスにおけるリーダーシップにも通じるかもしれない。
1.ただ無理矢理突っ込むのは匹夫の勇。敵を知り己を知ることによって初めて真の戦ができる。
2.「危険なことは俺がやる」という部下を思う至情と、指揮官先頭の気迫と責任感が必要だ。
3.部下が迷ったときには指揮官として何らかの指示を与え、自分の立場、自分の責任を明確にすべきだ。

木村中将とは対照的に、インパール作戦を失敗させ、配下の多くの将兵を犬死にさせた牟田口陸軍大将の例も印象的である。死んだ兵隊達に、すまなかった、と頭を下げることもなく、作戦の失敗は指揮官である自分の責任ではなく部下のせい、と自己弁護に終始した余生を送ったそうだ。酷い話だ。怒りを覚える。

飯田進「地獄の日本兵・ユーギニア戦線の真相」(新潮新書)
これは悲惨極まる実話だ。第二次世界大戦で死んだ将兵の多くが「餓死」であったことの証言である。私は戦争を経験した老人のお話しを聞いて最も怒りを覚えるのは、日本軍の最高司令官や参謀長が、中国や朝鮮などで酷いことした、ということよりも、自国の軍人に対し冷酷極まる仕打ちをしたことだ。

実際の戦いで武運無く戦死するならまだしも、餓死というのはまさに犬死にだ。死んでいった兵士達はどんな気持ちであったろうかと想像するだけで、辛くなる。

敗色濃いガダルカナル島からの撤退を検討していた時には、「どうせ撤退出来ずに玉砕しなければならないのなら、いっそのこと、細菌兵器で(日本兵もろとも)アメリカ兵も一緒に殲滅してはどうかという発想があった。しかし、東条英機首相が猛反対して、実行されなかった」…。

自国の兵士や市民をも殺すような国家・組織とは…何が「亜細亜の解放・自存自衛の為」だ、と激しい怒りを覚える。


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2012.08.29 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 歴史・文化



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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