古本のもう一つの楽しみ・副産物




古本を買うと、嘗てその本を買った赤の他人の生活や活動が垣間見えるケースがある。思わぬ副産物にわたしの好奇心のムシが騒ぐ。

一つ目の例。
和田芳恵著「樋口一葉の日記」(福武書店)1983年1月15日第一刷。

3年程前に買ったこの本に、びっくりするような「私信」が挟まれていた。その私信とは有名人に関わるものなのである。時効とは思うが、さすがに宛名と差出人の名は伏せておこう。差出人は某映画監督であり、宛名は映画界では有名なプロデューサー・制作者である。

〇〇様。

「一葉の日記」、送ります。
このままでは、あまりに格調が高過ぎますが、脚色次第ではそうとう面白くなると思います。
ただ、やはり、2時間程度のスペシャル・ドラマの素材のような気がします。
波乱万丈というのではなく、どちらかというと一人の、極貧のなかで創造に光明を見出す女性の、内面のドラマですから。
話題性から言っても、中森明菜の再デビューにとってもその方が得ではないでしょうか。
いずれにせよ、もし、これを彼女が無事なし遂げたら、大変な話題になると思います。
まあ、これは余計なことですが。

本当は、映画でやりたいものですね。
とにかく、一度読んでみて下さい。

二十四日から二十八日まで、小豆島へ行ってきます。

それでは、又。

○○拝。


私が調べた限り、過去、樋口一葉のドラマ・映画で中森明菜は出演していないと分かり、結局、私信の企画は実現しなかったと判明する。

この私信には年・月が書かれていない。いつの頃であろうか?

また、「再デビュー」とはどういう意味であろうか?

例の恋人との破局があった頃であれば、1989年~1992年くらいかと推測する。年齢的に24才~27才であるから、樋口一葉が亡くなった時の年齢、24才と6ヵ月にも無理なくフィットする。

心の痛手から心機一転を図るタイミングであったかもしれない。

しかし、この推測はおそらく外れているものと思われる。何故か。

差出人は小豆島に行くとある。小豆島と言えば「二十四の瞳」を思い浮かべる。調べると、映画「二十四の瞳」のリメイク版は1987年の作品と分かる。

つまり、この私信はそれよりも以前に書かれた可能性があるのである。

いずれにせよ、差出人は中森明菜の中に女優としての資質を認め、大いに期待していたのであろう。

私も彼女が樋口一葉を演じたら面白かったと思う。きっと、聡明で、しかし、どこか陰りがあり、リアルな生活感のある一葉を演じたと思う。


二つ目の例。
笠原十九司著「南京難民区の百日・虐殺を見た外国人」(岩波現代文庫)2005年8月19日第一刷。

こちらは前の人が買った時のレシートが残っていた。

慶應義塾生活協同組合・三田書籍部
2005年11月21日(月)
外新書…¥740
外文庫…¥1300(←こちらが笠原氏の本の値段)
書籍小計…¥2040
書籍割引10%
小計…¥1840
外税…¥92
合計…¥1932
お預り…¥2002
お釣り…¥70
12:59TM


時刻が12時59分ということから、この人(学生)はおそらく、慶応三田の西校舎の地下一階、学生食堂で昼食を済ませ、そのまま隣の書籍部に行ったのであろう。

2002円で支払い、財布にたまった一円玉の処理を怠らない細さから見て、女性の可能性もある。

本のジャンルからこの学生の所属学部は、文学部かもしれない。もちろん、学校職員の可能性もある。お金に不足している学生にとって、2000円はけっこう高い。もっとも、お金持ちのボンボンやお嬢様もいるけど(苦笑)

この本を読んだ学生はどんな感想を抱いたであろうか。残酷な殺戮や強姦・略奪の場面の数々に、身体が震えるほどの衝撃を受けたであろうか。悲しみや怒りを感じたであろうか。それとも、これらはデタラメ、まぼろし、デマに違いない、規律正しい旧日本陸軍がそんなことをするとは考えられないと思ったのであろうか。


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2012.09.07 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 戯けたライフ



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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