今野敏「隠蔽調査」シリーズは抜群に面白いわ






隠蔽捜査隠蔽捜査
(2005/09/21)
今野 敏

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今野敏・著「隠蔽調査」シリーズは1作目、2作目、3作目、3.5作目(連作集)、4作目、と計5作あり、現在、3作目までが文庫化されています。

いわゆる「警察もの」です。警察もの、と言えば、私は横山秀夫の「陰の季節」「動機」で堪能しました。警察組織には、しばしばテレビドラマの主人公になる捜査部門だけではなく、総務課や人事課など、一般の企業と同様、様々な部門があります。

横山氏はそれら事務方部門にもスポットライトを当て、捜査部門に劣らぬ戦いやドラマを展開しました。

「隠蔽調査」は、警察庁のキャリア官僚が主人公です。竜崎警視長は東大法学部卒で、エリート意識が強く、息子にも東大法学部を目指すように言い、それが最良の人生を保障する道と信じて疑わぬ人間として登場します。

これは鼻持ちならぬ嫌な奴の典型ですね。ところが、思わぬ事件から主人公は出世街道から外されます。ここらからが作者の腕の見せ所ですね。

内容と文章はさほど重厚でも深刻でもないですが、さりとて、ゆるゆる系でもありません。情景描写は簡潔明瞭で、会話は軽快。それでいて、作者は人間心理に通暁しているのでしょう、何とも言えない味わいがあります。

例えば、「隠蔽調査3・疑心」では、竜崎警視長は大森警察署の署長として活躍しますが、こんなタッチです。
竜崎「容疑者にはうかつに触るな。不審な人物が浮上したら、即座に綜合警備本部に情報を上げるんだ」
部下(女性)「了解しました」
竜崎「頑張ってくれ」
部下「最善を尽くします」
竜崎は電話を切った。
戸高「頑張ってくれ、ですか」
戸高が言った。
「部下には、いつもそういう言葉をかけるんですか?」
相手が女性だから、皮肉っているのだ。竜崎は、意に介さずにこたえた。
竜崎「ああ、そうだ。君には言ったことがなかったかな?」
戸田「記憶にありあませんね」
「いくらでも言ってやるよ。頑張ってくれ」
戸高は、苦笑を浮かべてむこうを向いた。竜崎は、口調を改めた。
竜崎「今回も、いい仕事をしてくれた。鈴木昭雄の件は大手柄だ。おかげで、捜査が一気に進んだ」
戸高は、むこうを向いたまま言った。
戸高「さすがにキャリアは乗せ方がうまいや…」
言葉は皮肉だが、まんざらでもなさそうだった。

なお、今野敏氏は沢山の著作がありますが、愛読者の話し等から、「隠蔽調査シリーズ」をもって今野氏の代表作とするのはあながち間違いでもなさようです。

ところで、警察署の署長の階級が「警視長」なのはオカシイ、と気づいた人は警察もののベテラン読者か、警察マニアの人でしょうね。はい。署長の階級はだいたい警視くらいです。警視長は県警本部長クラスです。

シリーズには、竜崎と小学生時代の同級生だった伊丹という警察官が登場します。役職は警視庁の刑事部長で、階級は竜崎と同じ警視長です。

竜崎は東大卒ですが、伊丹は私大卒のキャリア官僚です。当然、出世街道では遅れる定めですが、色々あって、伊丹の方が竜崎よりも上の役職にあり、ここから両者を巡って悲喜交々、時にはユーモラスな展開が繰り広げられ、これがシリーズの読みどころの一つになっています。

私も大人になり、ある程度社会経験を積んでから「警察庁」と「警視庁」の違い、「刑事部長」と「部長刑事」の違いを知ったくらいの警察音痴でした(^。^;)

警察官の階級の最上位は「警視総監」ですが、「警視総監」と「警察庁長官」とでは、どちらの方がエライか?なんてクイズがテレビ番組でありましたね。


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2012.10.29 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 文学



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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