テレビの時代物:良いものは見るのだ。吉原裏同心と木枯し紋次郎






流離 吉原裏同心 (光文社文庫)流離 吉原裏同心 (光文社文庫)
(2003/03/12)
佐伯 泰英

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→ドラマ「吉原裏同心」公式サイトここです

昨年くらいからあちらこちらの書店で佐伯泰英の時代物本が平積みにされ、やたらと目立つようになりましたが、私は「どうせ、男性好みのエロ系の読み物だろう」と思い込み、一顧だにしなかった。

ところが、NHKの木曜時代劇ドラマとして「吉原裏同心」が12回シリーズとして始まると知り、小説の方を読んでみた。ドラマの舞台が吉原というので「自称吉原研究家?」の私の興味をひいたこともある。

佐伯泰英の「吉原裏同心」は藤原周平のように人情の機微に触れて感動させられる時代物や、柴田錬三郎や五味康祐のように本格チャンバラや忍者もので楽しませるというタイプとは少し異なり、適度に色恋あり、適度にチャンバラあり、適度にミステリーあり、適度に笑いと涙あり、そして、吉原の風俗あり等、肩の凝らないエンターテインメントに仕上がっていると思う。エログロに陥っていないのも良い。

吉原については表の顔としての華やかさだけを美化するのではなく、裏の顔としての非情さも描き分けていて好ましい。クドクドとした能書きは最小限にとどめ、読者を飽きさせないスピーディなストーリー展開だ。これなら通勤途上や出張先で読むにもとても良いと思う。ナルホド、佐伯泰英の本が売れるのも分かるような気がする。しかも、「吉原裏同心」は文庫書き下ろしで、20巻以上も続いている。凄い。第一巻から五巻目まで読みました。

文章のタッチにはさほど個性は無いが、どれも程良くまとまっている。多作なのに一定のレベルを保っている。まさしく職人技と思います。また、舞台となる吉原について相当調べたなと分かる。読むほどに吉原通になるでありんす。また、姉女房が俳句を嗜むとて、幹次郎もヘボ句を時々ヒネるのも良い。つまり、読者は「江戸風情」を程良く味わうことができる。

ドラマの方ですが、主役の吉原裏同心こと、神守幹次郎役を小出恵介が演じています。小出さんといえば、のだめカンタービレでは「飛んでる男」役で笑わせましたし、同じ時代物で大ヒットした「jin-仁」では真面目で純な旗本の跡取り息子役としてもなかなかの演技をしていました。今回は少し渋い役柄ですが、なかなか良い。

姉女房の汀女役の貫谷しほりも良い。貫谷さんはとても良い女優の一人と思っている。女優がどれも大根揃いだった映画「永遠のゼロ」で、主役の宮部の妻役を貫谷さんが演じたら遥かに味わいが深くなったのにと思う。

売れっ子の花魁、薄墨大夫役の女優も悪くはないでありんす。「jin-仁」に出ていた花魁の野風を演じた中谷美紀の妖艶さには敵わないとは思うけど、まずまずでありんすな。

吉原の顔役を演じる近藤正臣もますます渋くなってきましたね。

そう言えば竹中直人が主役を演じた「酔いどれ小藤次」も佐伯泰英の原作だったんですね。このドラマも悪く無かった。竹中直人は「鬱陶しい」イメージがあったのですが、最近は渋味とコクが出てきて実に良い俳優になったと思う。


吉原手引草 (幻冬舎文庫)吉原手引草 (幻冬舎文庫)
(2009/04)
松井 今朝子

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吉原をテーマにした小説では松井今朝子がお薦めでありんす。他に「吉原十二月」も良い。松井今朝子の吉原ものは筆致が細かく、密度も濃い。読み応え満点でござんすよ(^_^)ノ。

吉原については当ブログで「吉原花魁哀史」「吉原を復活させたら」と、何度か記事にアップしたことがあります。浅草は浅草寺の北側にかつての吉原がありましたが、現在ではその面影は全く無いらしい。度重なる火災で燃えてしまっただろうし、戦争直後の赤線廃止によって吉原は姿を消した。そもそも、女性が一人でもの欲しげに歩くような場所では無いので、私も見に行ったことはありんせん。


テレビ時代劇「木枯し紋次郎」

衛星放送TBSで再放送がされていますね。興味本位で見てみましたが、なかなか面白いです。今では爺様になってしまった中村敦夫の若かりし頃の渡世人姿はなかなかカッコ良い。縞の合羽に三度笠、腰には長ドスというアウトローが口に長楊枝を咥え「あっしには関わりの無いこって」とニヒルにつぶやく姿が大いにウケたとか。

人は誰でも日々の平凡な暮らしに飽き飽きし、疲れ、次に非日常的なものに憧れるものです。旅はその一つです。アテの無い旅を続ける木枯し紋次郎の生き方はある意味、憧れに通じるのでしょう。このドラマがヒットした理由が分かる。

時代物には珍しく、武士がほとんど登場せず、主に無宿人・渡世人、親分衆、百姓や町人が登場する。セットよりもロケが多い。それも荒地や深い山々や険しい峠に渓谷。そして、沛然とした夕立。人情の温かみを感じることの無い寒々とした光景。マカロニウエスタン風だ。これらもまた時代物として当時では珍しいものだったのではないでしょうか?

お行儀の良い武士の何とか流のチャンバラとは異なり、渡世人同士が長ドスを振るう姿は泥臭くてカッコ悪い。が、それだけにむしろリアリティを不思議と感じます。本当の斬り合いはこんなものなのかも。

上條恒彦が歌う主題歌もカッコイイが、ドラマ中の音楽がとても良い!登場人物の心の動きを暗示するかのような微妙な味わいがあり、一度聞くと耳から離れない。誰の作曲だろうと思いきや、湯浅譲二さんだったんですね!どうりて!

木枯し紋次郎のストーリーそのものは取り立てて特徴があるわけではないが、音楽の良さでかなり助けられていると思う。やはり、映画やドラマでは音楽は重要なのだ。

あらためて、木枯し紋次郎がヒットした理由が分かるような気がします。


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2014.07.10 | | コメント(9) | トラックバック(0) | 戯けたライフ



コメント

時代物

片割月様

本は読むほうではなかったのですが、周りにBook Clubに入っている人が数人にてその人たちの影響もあって、昔旅行の時に読むつもりで買った本が読まないでおいてあった物から読見始めたら結構たのしめます。

イギリスの作家のものではアガサ・クリスティーのDeath on The Nile。早々に犯人の予測がついたのであとは殺人方に興味。 R.Adamus の Watership Down. は人間社会をほうふつとさせて児童文学というより大人が十分楽しめる。 以前にもアニメ映画になっていますが、宮崎作品で観たい。
(引退されたから無理か)
 J. Herriotの The All Creatures Great and Small.
若い獣医と貧しい牧場主たちとの心温まるエピソード。Greedのない登場人物に癒される?
米国は人気作家のR. LudlumのBourn Identity と J. Grishamの Client。この二人の作品はよく映画化される。読んでから観るか、観てから読むか、、。読んでから観ると、すでに登場人物のイメージが出来上がっているので映画を観るとがっかりすることが多い。 The All Creatures,,, もBBCの作品がYoutubeに上がっていたので観て主人公のイメージが想像していたのと違ってがっかり(笑)
「琥珀色の目のうさぎ」を奨められましたが、少し読んでも中々クリックせず、これはGive up.

時代物は池波正太郎と藤沢周平を沢山。剣客商売は痛快で肩がこらなくて気に入っています。

ご無沙汰している間にずいぶん読みました(笑)
 

2014/07/11 (金) 01:36:47 | URL | kan-kan #E0/upmTg [ 編集 ]

楊枝と台詞

確かに木枯らし紋次郎を観ると用事もないのに楊枝をくわえて定番のセリフを言ってみたくなるものである(笑)

2014/07/11 (金) 08:01:05 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

時代物にチャレンジ

 片割月さま、レス&お元気なコメント、ありがとうございます!

 ここの所、次第次第に時代物にハマりつつあります。とは言え、ハードボイルドな「時代物」は苦手なので少しずつ馴らしている所。高田郁を読んでいると時代物大好き人間に「お子ちゃまだね~。やっぱり佐伯㤗英よ!」と意味不明に威張られております。
 
 ドラマというと全く関係ないのですが、「シャーロック」から始まり、ジェレミー・ブレッドの正統派のホームズや様々なパスティーシュ映画にハマっています。小説もホームズの原典よりもパスティーシュの作品の方が面白い(というと語弊がありますが)
 コメント欄でP・D・ジェイムズの「高慢と偏見」の続編ミステリを紹介して下さっていましたが、(図書館に予約でを入れました! 面白そうですよ)こういう遊び心は素敵ですね。「シャーロック」だってこんなに原作の設定も何もかにも弄っていいのか??と思う位。原作の固有名詞しかないじゃん! と思わせておいて、原作のエピソードをしっかり取りこんでますし。
 ジェイムズのドラマやるのなら、CSをもう一度契約しようかなあ。「ダルグリッシュ警視」も「フロスト」もここでやっていましたね。英国ミステリドラマは原作に忠実というかエッセンスを活写するのも醍醐味の一つですものね。
 時代劇から、どんどん離れたコメントでごめんなさい! 必ず佐伯㤗英にチャレンジします。
 ファントムさま、楊枝くわえて「あっしにはかかわりのない事でござんす」ってやっていたのですか? 何か、すっごく可愛い(\^〇^/)(失礼しました)文化全般や音楽に堪能な渋い趣味人を連想しておりましたが。そのギャップがいいのかな。

2014/07/11 (金) 09:44:33 | URL | shige #X91rLkcY [ 編集 ]

shige様

コメント有り難うございます。
私は、どうも映画やドラマを観ると主人公になった気持ちになるのです(笑)

2014/07/11 (金) 20:41:54 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

ファントムさん、超オモロイ

私も爪楊枝加えてセリフを言ったクチです〜

最近のファントムさん、ホント、ギャップが面白いですよ〜
小出しに地を出してきてますね。

私も、映画館から出てくる瞬間は、よく、成り切っちゃってます。
成り切りが持続しすぎて、フラッシュダンスの後に、髪をクルクルのカーリーヘアにしちゃいました。ちょっと恥ずかしい思い出です。

2014/07/11 (金) 21:38:46 | URL | クロママ #zbXJIH6I [ 編集 ]

Re: 時代物

kan-kan様。

>アガサ・クリスティーのDeath on The Nile

「ナイル河殺人事件」ですね。映画でも見たわ。まあ、クリスティでは中の下くらいの出来でしょうか?

池波正太郎の剣客商売も楽しく読めますね。

それと、「真田太平記」は凄く長いけど、面白かったわ。
草刈正雄が真田幸村役、渡瀬恒彦が兄の真田信幸役を演じたNHKの長編ドラマも痛快でした。

私は戦国ものはそれほど読まないですが、徳川家康の大軍を2度も打ち負かした真田氏は好きだわ。
お城が私の好きな長野県の上田市のあるというのも、親近感が持てます。

2014/07/11 (金) 21:43:02 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: 時代物にチャレンジ

shige様。

>CSをもう一度契約しようかなあ。「ダルグリッシュ警視」も「フロスト」もここでやっていましたね

ムムッ、そうでしたか。ム~ン。。。

私の場合、Jスポの料金がある上にCSまでは、なかなかネ(^_^;)

最近、シャーロック・ホームズの新和訳がちくま文庫から出ているようですね。

子供の頃に読んだきりですが、また読んでみようかな。

佐伯泰英は「吉原裏同心シリーズ」しか読んでいませんが、買って損は無いですね。

2014/07/11 (金) 21:56:53 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: 楊枝と台詞

> 確かに木枯らし紋次郎を観ると用事もないのに楊枝をくわえて定番のセリフを言ってみたくなるものである(

オッ!

ファントム様がオヤジギャグを飛ばしている(-^〇^-)。

最初の頃のイメージと随分と違うんですけど(・∀・)。

2014/07/11 (金) 21:59:12 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

レイア姫&かぐや姫

クロママ様

フラッシュダンス良いですね。
スター・ウォーズを見ると、レイア姫の髪型になるかも知れませんね(笑)


片割月様

はい、この「用事と楊枝」のギャグは普段も良く使うギャグです(笑)
実はこのコメントは半分がこのギャグをご披露したかった訳なのです。
流石は、月から来た かぐや姫の片割月様ですね。
気が付いて頂いて嬉しいです。

2014/07/12 (土) 07:38:48 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

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プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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