私の好きな歌・その5

燈火(ともしび)の光(かげ)にかがよふ うつせみの妹が笑(ゑ)まひし 面影に見ゆ

万葉集・巻11- 2642(作者不明)


【私訳】
盛宴の灯りがちらちらと光って揺れている。それは…嘗てあなたが舞う姿が饗宴の灯りに揺れ、笑みもちらちらと光に揺れ動いていた…あの時の面影を見るようだった。


「燈火の光にかがよふ」という語句は万葉集では比類の無い発明である。
ロマン派の香りを先取りする斬新的な表現でこの歌は優れた個性を勝ち得ている。
万葉集の4500を越える歌には、類型的で平凡なものが少なくない。
そうした中にあって、無名の歌人の手になる秀歌がいくつも潜んでいるのである。
退屈して欠伸が出そうになった頃に、この素晴らしい歌を発見した感激は忘れられない。


もう一首。今の時候に相応しい名歌を。


なほ冴ゆる嵐は雪を吹きまぜて 夕暮さむき春雨の空

  
玉葉集・春上(永福門院)


これは現代語訳など不要である。読んだままの通り。
一見、ありふれているようでいて、選りすぐった言葉の位置と組み合わせが絶妙な為、かつて聴いたことのなかったかのような新鮮な響きがする。
歌の調べは細やかなタッチで潤み、凛とした佇まいすら感じる。
春への密かな憧れと、未だ去らぬ厳しい寒さへの恨みとが綯交ぜになり、屈折する様が美しい。

和泉式部、与謝野晶子など、恋を濃厚に華麗に詠む女性歌人は古今を問わず多い。しかし、永福門院のように情景を静かに詠む女性は空前にして絶後。

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2012.02.08 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 文学



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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