小学生の歩数が減った理由とは
東京都教委が都内の子供を対象に初の大規模な歩数調査を実施したところ、小学生は1日平均1万1382歩だったことが9日分かった。
1979年には1万7120歩という大学の研究もあり、30年間で3割以上減少した。中学、高校になるとさらに歩数は減る傾向にあり、専門家は「ゲーム機などの影響で放課後に遊ぶ時間が減ったのでは」と分析する。
都教委は昨年9~10月、都内の小中高校計135校に通う1万6100人の児童・生徒に歩数計を配り、1日の歩数を記録してもらった。その結果、1日平均で小学生は1万1382歩、中学生は9060歩、高校生は8226歩だった。
独立行政法人「国立健康・栄養研究所」は過去の複数の研究結果から、1980年代の小学生は、男子で平均1万8000~2万1000歩、女子で1万4000~1万7000歩だったと指摘。東京学芸大の波多野義郎・名誉教授(健康スポーツ科学)が1979年に都内の公立小学校4年生計18人に実施した調査では、晴天時で1万7120歩(男子1万8260歩、女子1万5980歩)だった。(読売新聞 2012年2月9日(木))
これはデータの手抜きと貧弱な分析の見本のような記事と思う。新聞の長期低落傾向を示すサンプルと思います。私のように平凡な一女性に侮られるようでは…。
参考までに以下のデータを示します。これは2010年度、東京都教育委員会のレポートからの引用である。
(文部科学省委託「おやこでタッチ!」2009(財)日本レクリエーション協会によると)今から約30 年前の小学生は、歩数が1日平均2万7千歩程度になるほど活動していたという報告がある一方で、現在では、1日平均1万3千歩前後の平均値が報告されており、そうした結果から、1日に1万歩という値は、多くの子供が達成できる水準であり、標準値というよりはむしろだれもが達成したい下限値であると考えられる。
今後、研究機関等による精緻な実態調査により、具体的な生活活動の基準設定が期待されるところであるが、現段階においては、これまでの知見を踏まえ、多くの子供の体力を高めていくためには、「1日1万5千歩」又は「1週間で10 万歩」程度を努力目標とすることが妥当であると考える。
このデータから見て、全国平均と比べて都内の小学生の歩数が特別少ない訳ではないと分かる。つまり、都内の小学生が特にゲーム機の影響を多く受けているとは言えないだろう。その意味では読売新聞の記事は読み手に偏見と誤解を招く危険がある。
東京都教育委員会の目標である「1日1万5千歩運動」の成果はあまり出ておらず、そのことに対する危機感が背景にあったのかもしれない。しかし、読売新聞の記事ではそれは伝わらない。
「ゲーム機などの影響で放課後に遊ぶ時間が減ったのでは」…これは「テレビなどの影響で夜に本を読む時間が減ったのでは」と同じくらいチープな分析と思う。
参考までに以下のデータを示します。
全国小学6年生の通塾率の推移(文部科学省による)
1976年…26.6%
1985年…29.6%
1997年…41.7%
2010年…47.4%
ゲームよりも通塾率の上昇の方が歩数の減少と強い相関関係がありそうだ。
もう一つは少子化と共働き夫婦の増加、住宅地事情も関係ありそうだ。
例えば練馬区の埼玉県寄りの住宅地を朝・昼と歩いてみれば分かることだが、道路には人っ子一人見かけない。子供が一人で歩くには非常に危険な状態である。事実、子供が不審な男に連れ去られそうになったという通報は度々ある。
大人は仕事で不在、わずかに老人だけが家で過ごしているのだ。
従って安全の為に、出勤時に自家用車で子供を送り届け、通塾時にも車で送り迎えする親も多いのである。
それに、外で遊ぶにしても、最低4人くらい集まらなければ面白くもないであろう。
現代ではそれは難しい。
これらも小学生の歩数減少の理由になるかもしれない。
そして「専門家」はこうした実態をよく知らないのではないだろうか。
もっとも、記者から電話で「取材」を受け、さらっと答えたくらいで、特に分析したのでもなさそうだ。
私が示した例が歩数減少の有力な理由と断定は出来ないかもしれない。
しかし、専門の記者ならもっと踏み込んだ分析が出来るはずだ。
読売新聞の記事はおそらく「手抜き」の類と思われる。
赤字経営に悩む大手メディアの地盤沈下は止まらないのだろうか。
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2012.02.10 | | コメント(0) | トラックバック(1) | 政治・社会