残酷とは何か





テロ集団による人質の殺し方は非常に残酷だ。

しかして、アメリカを中心とした空爆やミサイル攻撃によって、アフガニスタンやイラクの一般市民や子供達が殺されるのも残酷と思う。深刻な後遺症や環境汚染に繋がる劣化ウラン弾の使用は更に残酷と思う。で、どちらの方が「より残酷か」という問いはあまり意味が無いだろうとも思う。しかし、もしも、空爆によって五体バラバラになった死体や黒焦げになった幼児の死体を見たら、「首を切られて殺されるよりも、こちらの方がよほど残酷じゃないか?」とも思う。

ヨルダン政府は7年以上も「死刑停止状態」の政策をとっていたが、今回、テロ集団の死刑囚を報復的に死刑にした。これは残酷とはあまり思わない。アメリカ軍が特殊作戦でオサマ・ビン・ラディン一家を公然と、問答無用で殺害しても残酷とはあまり思わない。しかし、自動小銃でラディン一家を殺害するシーンを目の当りに見たら、残酷と思うかもしれない。

ことほど左様に、残酷という概念や、残酷と感じる感覚は、極めて頼りないものを基礎にしていると思う。

残酷か否かの例を、私の気持ちに正直に書いてみよう。

1.微生物のミジンコやゾウリムシをいくら殺しても私は残酷とは感じない。微生物など無限大?にいるだろうし、ここまで小さな生物について、「残酷」「可哀想」「気の毒」等の感情は湧かない。

2.子供がいたずらでナメクジに塩をかけて殺しても「残酷なことをした」とは思わない。ナメクジの親類のカタツムリに塩をかけて殺すのは、ほんの少しばかり「残酷」で「可哀想だ」と思う。この差は何だろう?また、小さな生き物であればあるほど、残酷という感情が湧き難いようだ。昆虫でも、小さなアリを踏み殺しても、あまり「残酷」という感情は湧かない。

3.サソリやムカデを殺しても「残酷」とは思わない。しかし、クモやザリガニを殺すことには少し違う感情を覚える。蛾を殺すよりも蝶を殺す方が「可哀想」「ちょっと残酷」という気持ちになる。害虫を殺しても残酷にはならないが、無害な虫や益虫を殺すと残酷ということになるのだろうか?

4.人食いサメやワニを人が復讐の念?から、又は安全対策の為に、頭を叩き割って殺そうが「残酷」とはあまり思わない。片や、人を食い殺した熊やライオンを殺すのは、「可哀想」「残酷」という気持ちを覚える。この差は何だろう?後者は哺乳類で知能が高いから?すると、知能が高ければ高い動物ほど、殺すと残酷なのだろうか?

しかし、オオカミのように知能の高い動物でも、人や家畜に害を与えるとの理由から、日本では明治時代から殺戮が行われ、絶滅させてしまった。これは残酷ではないのだろうか?

5.日本の一部の漁民がイルカを殺すことは必ずしも残酷とは思わない。それが漁民の生活を支える上で欠かせないという事実があるからだ。しかし、イルカが殺される現場を間近に見たら、「残酷だ、可哀想だ」と感じると思う。この場合、理性では残酷を否定しても、感情では残酷を肯定する矛盾を生じている。

6.小さな海洋生物のカニやエビを人が遊びで殺せば「残酷」と思う。食用に殺すのは「残酷」ではない。しかし、クラゲやナマコを遊びでいくら殺しても残酷とは感じない。何故か?後者は見た目が気持ち悪いからか?ハイエナやワニを殺すよりも、パンダやカメを殺す方が残酷と思うのは、見た目の可愛さや醜さが影響しているのだろうか?植物でも、綺麗な花を踏み潰すのは残酷と感じるが、平凡なタンポポやドクダミの花を踏み潰しても、さほど心は痛まないであろう。

7.ナチスの親衛隊は収容所のユダヤ人をいくら殺しても残酷とは思わなかったであろう。しかし、自国のドイツ人女性が敵兵士に強姦&殺戮されれば残酷と思ったであろう。

8.「エノラゲイ」号で空からやってきたアメリカ人パイロットは、広島に原爆を落としても、巨大キノコ雲を見ても残酷とは思わなかったであろう。むしろ、軍人として誇らしく思ったかもしれない。あるいは、白人から見れば黄色人種の日本人は殺しても残酷では無いと思っていたかもしれない。しかし、彼が地上に降りて、広島市内の凄まじい光景を見たら、自分のやった残酷な現実にショックを受けたかもしれない。

9.日中戦争において、銃剣で刺し殺す「新兵特訓」の練習台にさせられていた中国人捕虜がいた。刺し殺せ!と命令する上官が中国人捕虜を新兵特訓の刺殺練習台にすることを大して残酷とは思わないとしても、新兵の中には残酷と思った人もいたであろう。

10.死刑執行方法として、拷問のように本人に長く苦痛を与えながら殺すのは、直ぐに死ぬ銃殺や絞首刑よりも残酷と思う。北朝鮮のように機関銃で殺すのは普通の銃殺よりも残酷と思う。ギロチンは苦痛なく一瞬で殺せる道具だが、フランスでは「残酷」とされ廃止した。そのギロチン自体がそれまでの斬首死刑よりは残酷度が低いということで革命期に採用されたものなのだが。アメリカでは絞首刑から電気椅子、ガス室と変わり、現在では薬殺による死刑が行われている。これが最も残酷では無い方法とのことらしい。

薬殺による処刑は、死刑囚にまず麻酔薬を注入して眠らせ、次に筋肉弛緩剤を注入して呼吸を止め、最後に高濃度の塩化カリウムを注入して心臓を止めるそうだ。これなら死刑囚は何ら苦痛も無く、見た目も残酷では無いということらしい。しかし、人間を麻酔で意識不明状態にしたまま、化学的に薬殺するやり方にはゾッとする。底知れぬ冷酷さを感じる。これでは「死刑」というよりも、まるで「抹殺」ではないか。

以上、思いつくまま例を挙げたが、何を以て残酷とするか、残酷と感じるか否かは、その人の価値観(教育と環境)や立場、利害関係、殺される対象生物の大小、容貌、知能、殺戮・殺害の現場を見るか見ないか等により変わってしまう。

これでは、残酷の定義も価値判断もはなはだ危うく脆いものになってしまう。議論にもならない。しかし、人間の理性と感性は、「残酷な行為は止めよ!」と、私達に確かに教えている。

私は、第一に、いかなる理由があろうとも、いかなる殺人方法であれ、人が人を殺す、人類が人類を殺すことを、「残酷」と定義したい※1。残酷度の比較はあまり意味が無いと考える。戦争やテロは言うまでもなく、もっと身近では、人が疲労死するほどの長期間残業をさせたり、経営者が安全対策を怠った為に起きる従業員の事故死も残酷である。

第二に、人類の存在を危うくする行為も「残酷」と定義したい。※2

イルカやクジラを殺すことは生活の為の必要最小範囲であれば必ずしも残酷とはみなされない。が、必要以上に殺すことは残酷だ。何故なら、地球という「小さな星」の生態系を乱すような行為は、人類の生存をも危うくする可能性があるからだ。一つの種の絶滅は人類の自滅に繋がる道標になる。無計画な森林伐採も残酷と言える。逆に、増えすぎた動物を人間が一定数殺すことは、人類の生存と生態系保護の為である限り、必ずしも残酷とは言えまい。

※1
例外として、国家による死刑、正当防衛により一般市民や警察官が相手を殺してしまう場合と、以上の2つがある。

テーマから外れるが、私は死刑制度には反対である。理由の一つは、やはり、残酷と思うからである。第二の理由は、死刑の意義とされる内容のほとんどは、終身刑と代替え出来ると思うからである。

世界には200ヶ国近くの国があり、死刑廃止国、準廃止国、事実上死刑を停止している国の数は140ヵ国に及ぶそうだ。ヨーロッパではベラルーシを除き、全ての国が廃止している。代表的な死刑存置国は、アメリカ、中国、インド、日本。いずれも人口が非常に多い国であることが注目される。

※2
広義な意味での残酷は、地球環境を危うくする活動(大気汚染等)や状態(地球温暖化)にも当て嵌ると思う。



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2015.02.21 | | コメント(9) | トラックバック(0) | 政治・社会



コメント

地球温暖化

森林破壊による地球温暖化は深刻だ。
人類は植物へのこの残酷な行為により、温暖化という応報を受けることになるであろう。

2015/02/21 (土) 17:50:55 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

次は地球温暖化問題かな?

良くある勘違いに、森林の酸素供給量がある。

「森を守れ」が森を殺す

という本があります。環境問題を考える人は一度は読んでほしい本です。

けれども、全てが正しいことが書いてあるとは言いません。

1つの視点としては正しくても、別の視点からは正しくないとまではいえなくても、疑問符を投げ掛けたくなる部分はあります。

ある地域が突出して酸素を供給しているのではなく、二酸化炭素を吸収しているのではないということは、全体のバランスを崩さないようにするには何が求められるのかを、考えさせる本だと思います。

2015/02/21 (土) 23:23:38 | URL | バルタントモゾウ #- [ 編集 ]

残酷とは思いあがり、そして偏見

  片割月さま。

  私は以前、「ヒュースケン青年」のお話をしました。海外(異教の、しかも未開の地)に仕事で赴き、非業の死を遂げる。偶々、その国が変革の嵐に書き込まれ、血を見ない日はない、という状況である上に列強の圧力や攻撃にもさらされていた。元々、オランダは通商していた国ですし、いわば、中立国であったのに。
 私たちの同胞を惨殺した人々を決して許してはいけない。でも報復をしては同じことの繰り返し。彼らは何をしても法治国の裁判で裁いて欲しい。彼らは傲慢にも自分たちが一番の正義と思い込んでいる。残酷というのは、自分の主義主張を最高の物を思い込み、相手を殺戮するのが当たり前と思い込む心理状態だと思います。麻痺してしまい、人間とは言えない状況になる事。
 殺される側もそうでしょうが、殺す側にとってもそれは残酷な事で華以下と思います。無知と貧しさ、悲惨な環境に付け込まれ、一種の殺人の道具にされている人びとも沢山存在していると思います。

 今回の事件と同じとは言いません。しかし、かつて日本にもテロの嵐が吹いていた時代もあった。問答無用で相手を惨殺する軍人のクーデターだってあったのです。自国が今、平和主義だから、と言っても過去の戦争や行ってきた歴史が消えるわけではない。別に日本が悪い国だなどと断罪する訳ではなく、時と場合によっては誰しもがその様な「残酷な」加害者になりうるものだ、という事を認識しなければいけない、と思います。

 また、処刑方法の是非の議論が有りましたが、私は人を殺す手段は皆同じだと思います。例えば、医師が勝手に患者を安楽死させた場合、苦しみを取り除いてくれてありがとう、だとは思わない。苦しみ抜いている患者を看取る家族にとっては辛い状況であっても命がある以上、生きる意志を持つべきだと感じるから。
 だから、人道的に相手を死なせる方法などない。それは傲慢な思い上がりだと思う。相手の命を自分の自由に出来る、と考える事こそ、残酷なのです。

 これは生死だけでなく、相手の意思を自分の自由に出来ると思う事も残酷な事だと感じます。それはストーカーであったり、今、問題になっている悪質なクレーマーなど…。
 自分がそうならない様に心がけて生きる、まずそうありたいと思います。

2015/02/22 (日) 11:58:37 | URL | shige #- [ 編集 ]

Re: 地球温暖化

ファントム様、こんばんは。

> 森林破壊による地球温暖化は深刻だ。
> 人類は植物へのこの残酷な行為により、温暖化という応報を受けることになるであろう。

東南アジア諸国の森林破壊の元凶は、日本なんですよね。。。
日本くらい海外の木材を消費している国は無いでしょう。

2015/02/22 (日) 23:13:59 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: 次は地球温暖化問題かな?

バルタン様、こんばんは。

> 「森を守れ」が森を殺す

フムフム。。。興味あります。今度本屋に立ち寄った時に探してみますね^^

地球のメカニズムについては、まだまだ不明な部分が多いのでしょう。

環境問題となると、原因や対策をめぐって、専門家の間でもしばしば議論が分かれますからね。

2015/02/22 (日) 23:44:37 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: 残酷とは思いあがり、そして偏見

shige様、こんばんは。

>時と場合によっては誰しもがその様な「残酷な」加害者になりうるものだ、という事を認識しなければいけない、と思います。

ここ、とても重要なご指摘ですね。

無知と偏見が元凶となって、いつのまにか己が「残酷な加害者」になるケースは有り得ますね。

子どもの世界ではダマす側が悪ですが、大人の世界ではダマされる側も悪だと心得ないと。。。

戦争のほとんどが「正義」「平和」「自衛」の名のもとに始まっていることと合わせて、
色々と、考えさせられますね。

2015/02/22 (日) 23:57:28 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

無題

片割月さま、こんばんは


>何を以て残酷とするか、残酷と感じるか否かは、その人の価値観(教育と環
>境)や立場、利害関係、殺される対象生物の大小、容貌、知能、殺戮・殺害の>現場を見るか見ないか等により変わってしまう。

これが答えだと思います。この件に関わらず何をどう思うかはみんなその人の価値観というか、、これ言ったらオシマイなんですが、、^^;
片割月さまは誠実ですね。


また片割月さまもその後に触れてますが、「残酷度の比較はあまり意味がない」というのも、その通りだと思いました。私が言うなって感じですが。

広義での残酷という事であれば、この世は残酷な世界といえるかもしれませんね。

shigeさんの言葉をお借りしますが、私もばっちり「残酷な」加害者です。

死刑制度の賛否ですが
むつかしいですね。
私は賛成寄りだと思います。でもこの考え方、辿っていくとかの国の処刑と同じかもなと思い、自分で危険だなと思いました。そして心のどこかで、自分には直接関係ないだろうという心理も、、。

2015/02/24 (火) 19:28:31 | URL | みく #mauyLjdI [ 編集 ]

Re: 生き物に対する残酷が無理です

○○○様、こんばんは。

なるほどネ。。。

動物を飼われると、動物に対する「残酷」に敏感になるかもしれませんね^^


2015/03/10 (火) 19:15:31 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: 無題

みく様、こんばんは。

イエイエ、誠実というよりも、ありきたりの結論になってしまうだけでして(^_^;)。

>これ言ったらオシマイなんですが

全くです^^

だから、残酷の尺度というものを自分なりに持っていないといけないのかなあとも^^;

2015/03/10 (火) 19:33:20 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

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Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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