ミーシンコーチの深慮遠謀

日本語訳をされたブログ主のeco様の承認を得て、記事を転載させて頂きました。
eco様に感謝したします。


      <ジュニアをほじくり回す必要はない>アレクセイ・ミーシン。

モスクワ、2012年2月18日
ノーボスチ通信、アルチョム・クズネッツォフ


ミーシン「トゥクタミシェワがこれ以上ジュニアを“ほじくり回す”必要は無い」


(前文略)

トゥクタミシェワの代わりにポリーナ・シェレペンが世界ジュニア選手権のロシア代表チームへ送り込まれる。ジュニア・グランプリとロシアジュニア選手権の銀メダリストだ。

「我々はシーズン最後までジュニア層をほじくり回すのではなく、新しいシーズンの準備に、最高難度のエレメンツの習得に集中することに決めた」とミーシンが電話取材に答える。

「2つの道がある。人生で最も重要な試合に備えるのか、目前の大会に備えるのか。そう、人生で最も重要な試合に備えるには、今こそトリプル・アクセルを身につけなくてはならない。ジュニアのレベルではこのような難しいエレメンツ無しでも勝てるのだが」と当の専門家は説明する。「我々は将来のために、ソチオリンピックという重要な試合のために働いている。だから今は新しいプログラムを組み立て、新しい振付のやり方を見つけ、エキシビションナンバーを創るといったことに時間を費やそう」

トゥクタミシェワにとって最後のジュニアシーズンとなった今季だが、ミーシンはこれを総括して「誰もがこういうシニアへの上がり方を夢見るのではないか」と言及する。今季2つのグランプリ・シリーズとインスブルックの冬季ユース五輪で優勝した生徒について、「私の記憶の限りでは、このようなシニアデビューは未だかつて無かった」と語る。

筆者の対談相手(ミーシン)の考えによれば、この15歳のフィギュアスケーターは「今年すでに」最高レベルで試合に出る準備ができており、したがって、シニアへの順応に関する問題は起こるはずがない。

「近くにある小さいピロシキを食べる備えをするのか、遠くにある大きいケーキを食べる備えをするのか。我々は2つ目の道を行く。いちばん美味しいケーキを食べる準備が間に合わない可能性がある以上、小さいピロシキを食べるつもりはない」

以上。



先日の欧州選手権では教え子のプルシェンコ選手が優勝、ガチンスキー選手が2位と最高の成績を収め、ますます意気上がるミーシンコーチ。飛ぶ鳥を落とす勢いのまま、来る世界ジュニア選手権ではトゥクタミシェワ選手の初優勝を狙うであろうと思いきや、意外にもタゥクタミシェワ選手を欠場と決めた。

その訳は何か?どうやらソチ五輪での優勝を目指した遠大な戦略によるものらしい。シーズン前、練習ではクリーンに決めていた3Aを彼女はシニアGPSでも国内選手権でも跳ばなかった。私だけでなく少なからぬファンがガッカリしたと思うが、ミーシンコーチはあくまで確実に跳べるジャンプ、コンビネーションジャンプだけでシニア大会を戦わせた。その結果はミーシンコーチも十分に満足出来るものだった。多少は気掛かりであったであろう演技構成点の上でもシニアデビュー選手としては高い評価を見た。

少し問題があったのは、GPF以降、彼女のジャンプにやや安定を欠く傾向が出たことであろう。恐らく疲労もあったと思われる。どんなに優れたスケーターでも延べ半年間に渡る長い戦いで好調をキープするのは至難の技である。
恐らく今も本調子ではないと思われる。

こうした中、もしも他のロシア勢に遅れを取るような結果になり、最悪の場合に表彰台を逃すことでもあれば、シーズン前半で得たタゥクタミシェワ選手の評価は下がり、本人も自信を失う危険もある。それは避けたい。彼女をソチ五輪の最有力候補として、ロシア女子シングルのエースとして育てたいミーシンコーチにすれば、さほど重要ではない世界ジュニアよりは今後の準備と練習に向けた方が良策と判断したのであろう。

幸い、ロシアには有力な選手がまだいる。世界ジュニアにおけるロシアの「3枠確保」に不安はほとんどない。そうでなくてはいくらミーシンコーチの提案とはいえ、ロシア連盟も二つ返事で彼女の欠場を了承しないと思う。ある意味、常識を外れた判断と思うからである。彼女に代わる代表に、最近好調を取り戻したポリーナ・シェルペン選手が選ばれた。

こうしてタゥクタミシェワ選手には3Aやプログラム全体の質を向上させる練習時間が確保された。百戦錬磨の名伯楽ならではの熟慮と思う。嘗て、若きプルシェンコ選手に徹底して情熱を捧げたように、彼女にも全力で指導しているのであろう。これ、と決めたらトコトンやるのがミーシン流であろうか?
(その反面、ヤグディンとのアレコレもあったようだが、相性もあるのであろう)


eco様による日本語訳を通して感じるのは、ミーシンコーチのレトリックも冴え渡っていることだ。
「小さなピロシキと大きな美味しいケーキ」「ジュニアをほじくり回す必要はない」

話はフィギュアから外れるが、私はつくづく思う。私も含め日本人は明らかにプレゼンテーション能力に劣る民族と。能力というよりも教育訓練がされていないのだが。今、プレゼンテーションといえば、お客様の前で大型プロジェクターを使ってパソコンによる図解の説明やらをする姿がイメージされ、また、それがカッコイイとされる風潮が日本のビジネス界にある。

しかし、それはあくまで補助的な道具、極論すればオモチャみたいなものだと思う。大切なのは人間の生の声によるスピーチ力、話す力なのである。図表や絵も大切ではあるが、一番人を惹きつけるのは話し手の人間性と心のあり方なのだから。しかも、常に道具が横にあるはけではないのである。咄嗟に聞かれ、咄嗟に応えなければならない事の方が遥かに多い。少なからぬ日本人が苦手とすることだ。これがどれだけスポーツ界、そしてフィギュア界においても損をしているか、想像に難くない。



※eco様の情報によりますと、ISUの許可が下りればトゥクタミシェワ選手は国別対抗戦の方へ出場する可能性があるそうですよ!
この大会であればプレッシャーもさほど無いであろうし、ひょっとして公式戦での3Aの初披露もあるかも^^
私はどちらかと言えば、ソトニコワ選手の方が好きだけど、タゥクタミシェワ選手のエキゾティックな雰囲気もなかなか魅力的と思う。キュートだが年齢に似合わぬ冷静でたんたんとしたな言動は確かに大物である。
チケット買おうかな。。。。



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2012.02.21 | | コメント(4) | トラックバック(0) | ロシア人選手達・ロシアネタ



コメント

ソ連邦時代の戦術

インパクトは今シーズンで十分に与えた。
鉄のカーテンと異名をとったソ連時代の隠しだま作戦とでもいえるのかな?

相手に戦術を利用されないように、本番まではなるべく表に出さない。

その方が、衝撃的でもある。

バンクーバーのキム・ヨナの戦術を真似するのかも。

シーズン当初で、限りなく慣性形に近い状態で期待を持たせ、その完成形を取って置きの舞台で披露する。

中間での経緯は、問題としない。

浅田陣営にもこのような信念のある戦術を望みたいものだ。

2012/02/22 (水) 00:06:03 | URL | バルタントモゾウ #- [ 編集 ]

Re: ソ連邦時代の戦術

バルタン様、今晩は。

> インパクトは今シーズンで十分に与えた。
> 鉄のカーテンと異名をとったソ連時代の隠しだま作戦とでもいえるのかな?

今はどう見ても「アルミのカーテン」くらいでしょ(笑)


> バンクーバーのキム・ヨナの戦術を真似するのかも。
>
> シーズン当初で、限りなく慣性形に近い状態で期待を持たせ、その完成形を取って置きの舞台で披露する。
>
> 中間での経緯は、問題としない。
>
> 浅田陣営にもこのような信念のある戦術を望みたいものだ。

なるほど!一理ありそうです。

ヨナ選手の場合、国内選手権は免除(記録上は1位みたいね。摩訶不思議)で初めから代表は決まりですので、ある意味、やり易い環境にあったでしょう。

浅田陣営もそうですが、スケート連盟の考え方も大きいのでは。
真央選手に何としても「金メダル取りさせたい」と思うのなら、全日本免除とか、来季から優れた振付師を「専属」にさせて2年がかりで仕上げさせるとか。色々あると思うのですが。。

もっとも、真央選手本人が「特別扱い」を嫌うかもしれませんね^^;

2012/02/22 (水) 19:58:19 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

私もスケート連盟は浅田選手に金メダルを獲らせたいとう気はないのではないかと感じてしまうんですよね。シーズン中なのにアイスショーに出場させたり、浅田選手が出てきてからEXの団体戦まで作って毎年一月にやってますよね。力の入れどころを完全に間違ってると思います(苦笑)
興行収入よりも選手のことを考えてほしいです。
バンクーバーまでは浅田選手一人で戦ってたと言っても過言ではないくらい孤軍奮闘して掴み取った銀メダルだったと思いますから同じ過ちはしないでもらいたいです。

フィギュアの世界は自分の力だけはどうすることもできない現状があるんですからもっと周りが助けてあげないといけないと思います。特に浅田選手がフィギュア界にもたらした影響は多大なるものなんですから少しぐらい特別扱いしても罰は当たらないと思いますけどね・・。キムヨナなんて他の韓国選手から苦情が出たぐらい特別扱いされ続けてたんですから。バンクーバーの閉会式の旗手も本当はキムヨナがやるはずだったみたいですけどスピードスケートの金メダリストに、「キムは国がバックアップしてきただけだから俺がやる」と旗手を奪われてしまったほどですから。

ロシアは着々と育ててきてますよね。ロシア選手は層が厚すぎて大変だと思いますけど。特にソトニコワ選手はもうすでにプレッシャーが凄そうで本来の力を出し切れてない感じがします。

日本は若手があんまり育ってないですよね。村上選手に注目がいって浅田選手の負担が少しでも減ればいいなーっと思ってたんですけどそうはならなかったですし。彼女もまだまだ課題が多い選手なのでこれから頑張ってほしいです。

長々とすみません・・・。

2012/03/09 (金) 00:09:11 | URL | ゆみ #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ゆみ様、こんばんは。

今回頂いたコメントのことですが、キムヨナ選手に関する意見を別として、
私はゆみ様とさほど意見は変わらないです(#^.^#)

ただ、連盟が下手に介入すれば「横暴」とファンから批判されそうだし、放って置けば「丸投げだ」と批判されそうだし、連盟のスタンスも難しいでしょうね。こういう特殊な競技では。

私はヨナ選手の演技は素晴らしいと思っています。ファンというのではないですが。

>日本は若手があんまり育ってないですよね

ここが気掛かりですね。。。
ただ、ジュニアというのはこの先、どうなるか誰も予測は出来ないと思っています。
特に女子は難しいでしょうね。体型変化もありますし。

私は日本女子若手では佐藤未生選手の豪快さと、練習熱心と言われる宮原選手の成長を特に楽しみにしています。佐藤選手は潜在能力が高いと見ています。

> 長々とすみません・・・。

私はあまり極端に意見が違う人とのやり取りは好みませんが、それをお含み頂いた上であれば長いコメントでも遠慮なさることは無いですよ^^

なお、私はキムヨナ選手は嫌いではないし、素晴らしいスケーターの一人と思っています。

2012/03/09 (金) 20:43:58 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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