バッハの中で私が好きな曲:私のバッハ受容はこれから




●バッハ:カンタータ51番「全地よ、神にむかいて歓喜せよ」より、第四曲コラール終結部~第五曲「アレルヤ」
シュヴァルツコプフ独唱→ここです

自分が関心の無いジャンルの音楽はたいてい、どれも同じように聞こえるものだ。ジャズに関心が無い人にはどのジャズのナンバーも同じに聞こえるし、フラメンコのどの歌も同じように聞こえるものだ。かつて、私の祖父は私がドビュッシーやチャイコフスキーを聴いていると、「また『ベトベン』を聴いているのか!」と顔を顰めたものだ。

特に、クラシック音楽に関心の無い人には、どんな名曲も睡眠薬でしかない。

私はクラシック音楽が好きでありながら、バッハは苦手だった。どの曲も同じように聞こえる(笑)。睡眠薬なのだ。実際、バッハの名曲「ゴルトベルク変奏曲」は不眠症の貴族の為に作曲されたとの説もあるくらいなのだ。とにかく、同じようなリズムとテンポで、地味で同じ音型がひたすら繰り返されるのだ。そして、どの曲も色に例えればセピア色一色に塗り込められた感じだ。単調で音楽に山や谷が無いので、次第に睡魔に襲われてしまう。

そうかと思えば、オルガン曲のトッカータだのフーガだのパッサカリアとなると今度は重苦しい。重苦しい音楽はマーラーやブラームスでさんざん聴いているので、バッハを聴いてまで重苦しい思いをするのは勘弁だ。

…と、まあ、私はこんな調子でしたが、3年前くらいからバッハを頑張って?聴くうちに次第にその良さも分かり始めた。しかし、器楽曲はやや苦手だ。パルティータとかシャコンヌとか無伴奏チェロ組曲などは、聴いていてへこたれる。ブランデンブルク協奏曲やバイオリン協奏曲はそれなりに良いとは思いますが、モーツァルトやロマン派の協奏曲の方がやはり面白いし、楽しめる。私にとってはバッハは声楽曲の方が良い。

「ミサ曲ロ短調」「マタイ」「マニフィカト」には感動的で素晴らしいページがあります。なるほど、バッハが「音楽の父」と称されるのもむべなるかな。こんな音楽を聴いていたら、仏教徒からキリシタンに宗旨変えしたくなる。

「カンタータ」はどうか?カール・リヒター指揮による8曲の選り抜き盤を中古屋さんで見つけ、聴いてみた。「61番」「4番」「56番」「106番」「26番」「80番」。そして有名な「心と口と行いと生き方は」のコラールの入っている「147番」。この中では2本のブロックフレーテの響きが印象的な「106番」に魅せられますが、概して、どの曲も私には退屈だ。1曲を聴き通すのはちょっと苦痛。私がこんなことを言うのは僭越も甚だしいけど、曲による出来不出来の落差があるように聞こえます。

もしかすると、私がワーグナーの壮大で劇的なオペラを聴き過ぎた後遺症かもしれません。

しかし、「51番:全地よ、神にむかいて歓喜せよ」には大いに魅せられました。バッハにしては明るく華やかで、オペラチックだ。演奏時間がカンタータにしては18分程度と短めなのも手軽で良い。バッハ通に言わせると、この曲はバッハのカンタータの中でも特殊なものに属すらしい。が、そんなことはどうでも良い。

何よりも、最後の五曲目「アレルヤ」が素晴らしい。映画「オーケストラの少女」でも取り上げられ有名になったモーツァルトの「アレルヤ」とつい比較したくなります。モーツァルトが「子供の無垢な響き」でれあば、バッハは「大人の無垢」とでも言えようか。音楽を聴く喜び、大袈裟に言えば、生きることの喜びすらも感じます。

上の動画で紹介したように、第四曲目のコラールの終わりから第五曲目「アレルヤ」に移行する所からして感銘をうけます。特に転調もしていないのに、ガラリと楽想が変わる。これも不思議な魅力だ。また、ソプラノとトランペットの掛け合いも協奏曲風で実に耳に快い。この2つの組み合わせは滅多に無いので新鮮に響きます。

私はまだバッハを好きとは言えないけど、この「51番」は大好きで、たびたび聴きたくなる一曲です。

シュヴァルツコプフ独唱は豪華過ぎてバッハのカンタータにはどうか?とも思えますが、私の愛聴するエディト・マティス独唱の動画が見当たらないので、これを選びました。



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2015.11.17 | | コメント(12) | トラックバック(0) | 音楽



コメント

グールド

「ゴルトベルク変奏曲」と言えばグールドの演奏を思い出す♪

グールドは画期的な解釈で「ゴルトベルク変奏曲」に命を与えた♪

ですので、グールドの演奏で「ゴルトベルク変奏曲」をお聴きください♪

https://www.youtube.com/watch?v=1PBlY3USDXA

2015/11/17 (火) 07:06:35 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

Re: グールド

ファントム様、こんばんは^^

グールド演奏の「ゴルトベルク変奏曲」(旧録音の方)は、私もCDを持っていますよ^^

グールドなら「睡眠度」はかなり低下しますね(^^)

でも、曲自体はあまり私の好みではありませんの。

グールド演奏の「イタリア風協奏曲」は、割合と好きな方です。

2015/11/18 (水) 00:10:24 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

原点は歌心

月小妹こんにちは
>バッハは声楽がいいとおもう
さすが、月姫はバッハの心髄を心得ておられる。
バッハの音楽は声楽が原点です。
彼の作品番号を見ればそれは一目瞭然で、声楽曲のナンバーは軒並み若い数字に偏ってますよね。
一方、器楽曲の定番は中期〜後期に作られています。
シジが格闘中のインベンションは700番台、イタコンは800番台、ブランデンブルグ協奏曲は1000番台です。
バッハの器楽曲は、声楽を器楽に効果的に転換する実験です。
ある意味、彼の音楽的野心みたいな要素も含まれているかもしれない。
それは同時代の人々には殆んど理解されず、辛うじてイタコンが異例のヒットを飛ばしたという記録があるだけです。
後に、モツやベト、ショパン等がバッハの作曲手法に大いに感化されたというのは有名な話ですが、
複数の声部を鍵盤楽器のようなひとつの楽器でどう表すか、ほんとによくツボを押さえて作り込まれてて、ため息が出ます。
演奏する側は、10本の指で複数のパートをそれぞれ歌わせることを要求され、各パートを聞き分け弾き分け音色の色付けをしながら、ハーモニーをまとめなければなりません。
月姫はバッハの器楽曲はカラーに乏しいと感じるのですね。。。。
確かに色付けは難しいですが、
グールド以降、バッハはカラフルに演じがいがあると気づかれつつあります。
シジも目下努力中ですが、弾きばえしないわりに複雑な変調や臨時記号だらけで弾き通すのに必死で硬い音に成り果てたり、道は遠いです。
ただ、ポリフォニーを勉強すると、シジみたいに悪耳でもオーケストラの各パートの音が大体聞き分けられるようになりましたよ。。

2015/11/18 (水) 16:51:26 | URL | シジフォス #- [ 編集 ]

モダン楽器とオリジナル楽器

わぁ、同志ですね!
私も本当にバッハが好きになったのは、カンタータを弾き始めてからです。それがきっかけで、ついにはバロック。ヴァイオリンに手を出すことに^^。
初めてオリジナル楽器の演奏を聴いた時(中学生頃のことで、はるかはるか昔ですが)は、「昔仕様の楽器を使っている」ことしか意味が見出せないようなつまらな~い演奏で、こんなものを弾きたい人の気がしれないと思ったものです。
が、その後猛烈な勢いで奏法の研究が進みました。

モダン楽器とピリオド楽器、どちらの演奏を好むかは、全く趣味の問題です。モダン楽器の艶やかな音色に比べ、マットで地味な音というだけで、古楽器を受け付けない人もいます。
しかし、その分、古楽器奏者は音の立ち上がりや方向性にものすごく配慮している。当時の作法に則ってヴィブラートが少なく、各パートがはっきりと独立して聴こえることや、音に揺らぎがない分、和声がめちゃくちゃ美しく聴こえることも魅力です。もちろん、奏者の音程が良いという前提での話ではありますが^^

BWV170のカンタータ1曲めのアリアは如何でしょうか?

https://www.youtube.com/watch?v=0WnBPbvbsoo

歌唱はカウンターテナーのアンドレアス・ショル。
指揮はフィリップ・ヘレヴェッヘ。

カウンターテナーvs女声のアルトも好みが分かれるところですが、
私はカウンターテナーに色気を感じます^^

ところで、シジフォスさま

BWVは作曲年代別ではなく、ジャンル別なのですよ^^
バッハは教会付きの音楽家ですから、生涯に渡り、教会行事に合わせてカンタータを作曲し続けています。



2015/11/18 (水) 23:48:19 | URL | バジル #- [ 編集 ]

作品番号

バジル様、バッハの作品番号はジャンル別で年代は通しでないのですね。
慌てて作曲年代をググるとジャンル内でも年代は前後バラバラで、ええええ!?でした。
訂正ありがとうございました。
ブランデンブルグ協奏曲はむしろ若いときの作品ですね。
声楽と器楽のどちらがバッハの原点かは製作年代ではわからないってことですね。。。
オルガン奏者であった彼は、初期にはバロック作曲家の勉強から始め、フーガ作曲辺りから器楽曲を手掛けるようになってるみたいです。(1708年頃〜)
カンタータはざっと見たところ、1720年代以降に多い。
インベンション、平均律、イタコン、ゴルトベルクは後期

ブランデンブルグ協奏曲は実はシジも苦手で、掴み所がわからないというか、、、。
製作年代にこだわってみると、バッハの作曲クロニクルは初めは歴代バロックの研究から始まり、多分そこからヒントを得た器楽曲の作曲を手掛け、声楽曲の量産と並行しながら、器楽曲の実験的熟成へと向かっていったってことでしょうか。

2015/11/19 (木) 01:47:03 | URL | シジフォス #- [ 編集 ]

Re作品番号

シジフォスさま

ご返信、ありがとうございます(*^_^*)

カンタータは、教会音楽長にとっては一番重要な「お仕事」です。
「年に何曲書く」という契約で就任していたはず。
ヴァイマルやケーテン時代にも書いていますけれども、
ライプツィヒの聖トーマス教会楽長に就任(調べたら1723年だった)してから数年が最も精力的で、ほとんど毎週のように礼拝時に新作を演奏していたそうです。なんと贅沢な!

ちなみに当時はバッハをはるかに凌ぐ人気を誇ったテレマンは
教会との契約を忠実に守り、生涯で1700曲!ものカンタータを作曲しています。
聖トーマス教会はまずテレマンに楽長を依頼したのだけれども断られてしまい、仕方なく(?)バッハを呼んだというのも有名な話です。

この頃の作曲家は現場主義。
鍵盤は自分で弾けるから問題ありませんが、他は楽団の様子を見て書かれることがほとんどです。優秀な奏者が揃っていれば、高難度の曲を書く^^
ソロもたいがいは「あいつに演奏させよう」という当て書きです。
ライプツィヒ時代には、教会とは別にカフェ・ツィマーマンという店で、学生たちで編成したアンサンブルで器楽曲を演奏していたのだとか。あぁ、その場にいたかった!

その店名を冠した「カフェ・ツィマーマン」という古楽アンサンブルがあります。器楽曲の録音をたくさん出していますが、とても自由で魅力的な演奏です。
ブランデンブルクも印象が変わるかもしれませんよ(^O^)/

2015/11/19 (木) 11:36:57 | URL | バジル #- [ 編集 ]

パーティー

テレマン良いですね(^_^)v
わたしは大阪のテレマン室内オーケストラの演奏会に良く行きました~(*^^*)

主な目的は恒例の演奏会後のパーティーで~す(#^_^#)
美味しかったで~す(^_-)

2015/11/19 (木) 12:27:12 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

Reパーティー

ファントムさま、こんにちは(*^_^*)
いつかご挨拶を、と思っていました。

このブログを最初に拝見した頃は、どなたとも会話されることもなく、あたかも一言居士のようにコメントを入れてらしたような・・・^^
おそらくここに集う人間に対しても警戒心がいっぱいだったのでは?・・・とお察しするのですが、如何だったのでしょう?
・・・その後の華麗なる変身ぶりは、本当に嬉しい驚きです。これも女主人・片割月さまのなせるワザですね♪

さまざまなジャンルでの博識と、それからもちろんターンマイスターとしての(!)分析は、いつもありがたく勉強させていただいてます。
今季の真央さん、楽しみですね♪

大阪のテレマン協会・・・おお、老舗。
私は関東圏の人間なので演奏会は行っておりませんが、そんなパーティがあったとは!





2015/11/19 (木) 12:57:24 | URL | バジル #- [ 編集 ]

ステップ解析

バジルさま お返事ありがとうございま~す(^_^)/

これからもいっぱいステップ解析しますので今後もよろしくお願いしま~す(*^^*)

2015/11/19 (木) 19:16:12 | URL | ファントム #- [ 編集 ]

Re: 原点は歌心

シジ小姉、こんばんは^^

>月姫はバッハの心髄を心得ておられる。 バッハの音楽は声楽が原点です。

姉様に誉めて貰うとは嬉しいわ(^^)

さすが、バッハに造詣の深い姉様ですわ(@_@;)。ひたすら拝読。

>グールド以降、バッハはカラフルに演じがいがあると気づかれつつあります。

これは分かるような気がします。

例えば、ブランデンブルグ協奏曲は最初、リヒター指揮のセピア色系もので聴いたのですが、イマイチ、ピンと来なかったのが、
イ・ムジチの演奏で聴いたら、面白い!と思えました。
明るく華やかな演奏だから、むしろ、バッハの内省的な良さが見えて来るような感じ。

逆に、ヴィヴァルディの四季をドイツのシュツットガルト室内管弦楽団の演奏で聴いたら、イ・ムジチよりも面白かったわ。
カクカクと角ばった律儀な演奏だから、ヴィヴァルディの良さに気が付いたって感じよ。

>ポリフォニーを勉強すると、シジみたいに悪耳でもオーケストラの各パートの音が大体聞き分けられるようになりましたよ。。

凄い(*_*)さすが姉様です。ポリは日本の音楽文化に欠如しているものだから、聴き分けるのは難しいですよね。

私は「カエルの合唱」なら聴き分けが出来ます(^^)

2015/11/19 (木) 20:41:55 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: モダン楽器とオリジナル楽器

バジル様、こんばんは^^

おや!バジル様はヴァイオリンでしたか(^^)
みなさん、ピアノやヴァイオリンと、素晴らしいですね。羨ましい限り!

ご紹介のカンタータ170番のアリア。

嗚呼ッ、こういう楽想のバッハがまさしく、私には睡眠効果をもたらすものなんです(^^ゞ
いえいえ、大丈夫、良いと思いますよ。声楽曲ならば!

私は以前に記事したように、ルネサンス時代のミサ曲やモテトが好きなので、
カウンターテナーや古楽器には「免疫?」が出来ていますので、大丈夫ですヽ(^。^)ノ
なんせ、歌っているのは男性ばっかりですからね(女性の場合もありますが)
カウンターテナーの独特の綺麗な響きは一度ハマると、もうその魅力からは逃れられない^^;

フィリップ・ヘレヴェッヘもルネサンス音楽もお馴染ですね!

2015/11/19 (木) 21:01:16 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

Re: Reパーティー

>このブログを最初に拝見した頃は、どなたとも会話されることもなく、あたかも一言居士のようにコメントを入れてらしたような・・・^^
>おそらくここに集う人間に対しても警戒心がいっぱいだったのでは?・・・とお察しするのですが、如何だったのでしょう?

ブヒッ、ギャハハハ(^。^)

>これも女主人・片割月さまのなせるワザですね♪

フフフ。。。エッヘン!<(`^´)>

2015/11/19 (木) 21:06:57 | URL | 片割月 #- [ 編集 ]

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Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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