悪い科学・良い科学?


世界を騙しつづける科学者たち〈上〉世界を騙しつづける科学者たち〈上〉
(2011/11)
ナオミ オレスケス、エリック・M. コンウェイ 他

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原語の英語の題名は「Merchants of Doubt」
これは「疑念を売り歩く者たち」くらいの意味であろう。
「世界を騙しつづける科学者たち」の題名はセンセーショナルだが、分かり易いとは言える。

つまり「たばこの二次喫煙も肺がんの原因になる」「フロンガスはオゾンホールの主因」「地球温暖化は二酸化炭素の増大とその温室効果」等がほぼ「科学者コミュニティ」の間では定説となりつつある時に、それらに異論・反論を述べた科学者たちがいた。しかも、同じ科学者たちがいずれの案件にも必ず登場し、反論を展開する。著者は彼等を「疑念を売り歩く者たち」と評しているのである。

彼等はタバコ産業、スプレー会社から研究資金の援助を受けたり、時には政府の要員として科学系出版社や大手新聞に睨みを効かせ、世論に大きな影響を与える。

科学と地球環境、医療と健康問題においては、たとえ科学でも100%断定出来ない灰色領域というのがある。彼等はそこにつけ込む。しかも「温暖化は二酸化炭素による温室効果が無いとは言えないが太陽活動の変化による影響が大きい」等、素人には判定が難しい領域で論争が行われるのである。

当時は1960年代~1980年代。彼等の信念はソ連の共産主義との戦いであり、自由主義、市場原理主義を重んじるリバタリアン(オバタリアンではない)であった。彼等は環境保護主義に対し「スイカだ」と揶揄する。
つまり、表側では緑を訴えるが中身は赤い共産主義ではないかと、巧みに当てこするのである。これが当時のアメリカ人の心に訴えるものがあった。

著者はなるべく公平に扱っているが、基本的に環境保護的主張が強いので彼等に対する評価は厳しい。しかし、現在でも地球温暖化について「疑念を売り歩く者たち」と同じような疑問を主張する科学者はいるのであり、賛同するものも少なくない。

こうした中に啓発される文言も色々と出て来るのが面白い。
その例をいくつか挙げよう。

①イギリスの作家、C・S・ルイスの言葉(名言だ!)

「こうして、証拠が欠けていること自体が証拠として扱われる。煙が出ていないのは、火がとても注意深く隠されていることを示す証拠というわけだ」

「ルイスの言うように、この種の主張に対しては効果的に反駁出来ない。『見えないネコが存在するという信念を論理的に突き崩すことは出来ない』が、この信念は「それを抱いている人物について多くを物語っている」

※例の陰謀論もルイスの言葉がピタリ、当てはまるではないか。証拠が欠けていることも、反論があることも、陰謀論者には己の主張の正しさの根拠になるのである。


②「全ての科学は社会的な文脈の中にあるが、だからといって重要な科学研究がその文脈によって特定の方向にねじ曲げられている証明になるわけではない」

政府の要職にある科学者だからと言って、彼等が「原発の危険性を過小にねじ曲げた」証明にはならない。逆に在野で活躍する科学者だからと言って、彼等が「原発の危険性を誇張しねじ曲げた」証明にはならない。こうした「いかにもありそうな憶測や偏見」は真実を誤らせるのではないだろうか。

「御用学者」「懐疑主義」「環境保護主義者」というレッテルも、我々の「思い込み」を助長する。

この本を読んで非常に驚いたことがある。
ニューヨークタイムス等、大手メディアが「疑念を売り歩く者たち」の激しい剣幕に及び腰になり、彼等の論文を大きく掲載するだけではなく、彼等に反論を申し出る「科学者コミュニティ」側の論文の掲載を却下するシーンが何度も出てくるのだ。

相手が弱いとなると畳み掛けるように攻め立て、相手が強く出るとたちまち腰砕けになるのは日本のメディアのお家芸と思っていたが、アメリカでも似たような例が多いらしい。

まあ、この世は力しだい。地獄の沙汰も金しだい。力しだい。

メディアと色男、金と力はなかりけり、ってことか。

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2012.03.04 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 政治・社会



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者アラフォー熟女ですが、よろしくお願いします。
最近は体力をつける為に、休みの日はえっちらおっちらとミニハイキングに勤しんでいます。

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